OJTを成功させる3つの原則
1:OJTの計画が無かった
私はある工場で生産性向上の指導を行っていました。私は製造部長に「新しく立ち上げたラインだが、出来高も品質もまだ目標に達していない。管理の問題ではないか」と質問しました。部長は「半年前に入社した課長にラインの立ち上げを任せたのです。この課長の管理が良くないために、色々な問題が発生しているのです」と答えたのです。私は「課長の管理力に問題があると言うが、新しく入ってきた課長の教育を行うのは部長であるお前の責任ではないか」と指摘しました。
部長は「もちろん、私はOJTで課長に仕事を教えました。しかし、課長はそれが実践できないのです」と言い訳を始めたのです。私は「それでは課長に行ったOJTの業務内容と評価表、そしてOJTの計画表と実績のデータを今すぐ持って来なさい」と指示しました。部長は困った顔をしながら「計画はありませんが、OJTを行いました」と言い出したので、私は「計画がない教育はOJTではない」と厳しく指導を行ったのです。
2:OJTを成功させる3つの原則とは
OJTとはOn-The-Job Trainingの略称で「上司が部下に仕事を通して、実践的な知識や技術を教える教育」のことです。OJTには3つの原則がありますが、管理者がこの原則を理解していないと、正しいOJTを行うことが出来ません。管理者には次のOJTの3つの原則を教育して、理解させることが大事です。
1)習得能力の目標を明確にする
OJTで最も大事な事柄は相手にどの程度の能力を身に付けさせるか、その目標を明確にすることです。OJTの目標設定のステップは下記の通りとなります。
1:必要な能力を明確化する
最初に部下の現在の仕事や将来の仕事に必要な能力とその程度を明確にします。
2:現状の能力を把握する
上司や周りの人に協力して貰い、現状の能力と程度を正しく把握します。
3:必要な能力と現状を比較する
部下が必要とされる能力と、現状の能力を比較してこのギャップを埋めることをOJTの目標とします。
4:目標を細分化する
例えば「日常業務をPDCAを廻して管理を行うことが出来る」と目標を決めたら、Pの計画に付いて「確実に実施できる計画を立案できる」とさらに細かい目標を明確にします。技術者ならば「機械の調整を決められた時間内で行える」と目標を明確にした後、「機械調整の知識を習得する」「機械調整のポイントを暗記できる」などと、細かい目標を明確にします。
2)精度の高い計画を作成する
OJTは指導を行う上司に進め方を任せてしまうケースがよくありますが、効果のあるOJTを行うためには、事前に精度の高い教育計画を作成することが重要です。計画には教育項目、担当者、教育期間を明確にして落とし込みます。能力の習得には個人差がありますし、仕事の状況によってOJTがスムーズに行えないこともあり得るので、計画には十分な余裕を持たせて作成することが大切です。計画を作成した後は教える上司と部下が一緒に計画を確認して、修正事項がないか十分に協議を行います。双方が協力して計画を作成することで、お互いに納得して無理がない計画を作成できます。
3)継続的にOJTを実施する
OJTは仕事を通して、実践的な知識や技術を教える教育のことですから、OJTを1回終えただけでは身に付けることが難しいのです。ですからOJTの基本は継続的に行うことを上司も部下も理解することが必要です。具体的には次のようなステップとなります。
1:効果の確認
1回目のOJTが終了したら、上司と部下は目標の達成度を一緒に確認します。達成していない目標に対しては「どの程度、出来たのか」「何がまだ出来ていないのか」を明確にします。双方がOJTで出来た事柄、出来ていない事柄を正しく理解するようにします。
2:次回の計画作成
出来ていない事柄に対しては、その不足を補うようなOJTの教育を立案します。この時にも上司と部下が協議することが大切です。特に部下の要望をよく聞いてそれを計画に反映させます。
2回目のOJTが終了した段階で上司と部下で効果の確認を行います。もし出来ていないことがあれば3回目のOJTの計画を作成するのです。OJTでは部下が知識と技術を習得できるまで継続して行うことが大切です。