実践!生産革新道場:遠慮なく叱って叱られる信頼関係を築け
1:相手を叱るには信頼関係が必要
ある日本人駐在員の集まりで、私は「最近赴任した駐在員から、タイ人はプライドが高いので人前で叱ってはいけない、と言われましたが本当にそうでしょうか、と聞かれました」と言ったところ、「いやいや、私は会議の席で厳しく叱ることがありますよ」「私も聞いたことがありますが、そんなことを守っていたら現場の問題は解決出来ませんよ」との反応がありました。現場を本当に知っている人は「叱る手法の重要性」を理解しているのだな。と改めて感じました。私は「叱る手法」は怠慢管理者を是正するには有効な方法であると信じていますが、そのためには「相手を遠慮無く叱る、相手も遠慮なく怒叱られる」との信頼関係を構築する前提が必要です。これなしで叱っていたら相手からの反発を受けて、叱る効果が出ないからです。
2:私の信頼構築の3項目
相手を厳しく叱るには相手との信頼関係が必要です。「この人に叱られるのならば仕方がない」「この人が叱るのだから、確かに私が悪かった」と叱られた相手が思うような信頼関係が前提なのです。私は定期研修で現地管理者を厳しく叱っていますが、今まで反発を受けたり、問題になったことは1度もありません。むしろ叱ることにより、管理者が態度を是正して、それが生産性や品質の向上となり数値として現れるのが普通です。私は現地管理者を遠慮なく叱って、相手が遠慮なく叱られるような信頼関係を築くために、下記のような事柄を行なっているのです。
1)叱ると注意するの基準を明確にする
叱るとは感情を入れて、相手の感情に直接訴えることであり、注意は冷静に問題点や改善点を指摘して相手に理解させることです。私はこの基準を明確にしており、現地管理者にも理解させています。私は「管理者の怠慢」は厳しく叱り、「管理者が努力したが問題を防ぎきれなかった」「問題を隠さずに報告した」などの場合は注意やアドバイスで済ましています。人によっては気分が良い時には叱らないけど、気分が悪い時には厳しく叱る人がいますが、これでは叱っていても、相手は「今日は気分が悪いから叱っているのだろう」と反省の気持ちを持たずに反発だけで終わってしまいます。叱ると注意するの基準を明確にすることにより、相手が感情的に叱っているのではないと理解して、信頼関係に繋がるのです。
2)目標達成のために全力を尽くす
叱る人が仕事の目標達成のために全力を尽くしている姿を見せることも、信頼関係の構築のために必要です。頻繁に現場に足を運び、現状を把握している姿を見せる、問題発生時には必ず現場で指揮を取る、仕事の目標達成のためには妥協をせず、全力を尽くす、このように振る舞うことにより、現地管理者が「あの人は仕事が出来る人だ」「常に仕事のことを真剣に考えている」と、信頼感を持つようにさせることが大事なのです。この信頼感があれば現地管理者は「この人が叱るのであれば、自分が怠慢であったのだ」と素直に叱られるようになるのです。
3)個人的な人間関係を作らない
私は毎月、400名以上の現地管理者の指導を行なっていますが、彼らの中で私の名前以外の個人情報を知っている人は一人もいません。私は現地管理者と仕事以外の話しは一切しません。もし現地管理者が「立川先生はタイに何年くらい住んでいるのですか」と聞いても「それは仕事に関係あるのか。無ければ余計な事は聞くな」と切り返します。定期研修先で現地管理者との年末のパーティーなどのお誘いも基本的に全てお断りしています。それは相手とわずかでもプライベートの話をすると、その段階で個人的な人間関係が出来てしまい、叱るときや叱られる時に余計な感情が入ってしまうからです。純粋に仕事だけの関係で相手を叱ることにより、「個人的な感情や好き嫌いで叱っているのではない」と相手に理解させることが出来るのです。