実践!生産革新道場:第267回:自責の考え方で対策を立案させよ
1:機械の故障により納期問題が発生
ある工場で機械が故障したために、納期遅れの問題が発生しました。私の研修でこの問題を取上げて、管理者に事情を説明させたところ、下記の事柄が判明したのです。
納期問題の経緯
1:機械の部品の調子が悪いために、製造がメンテナンスに修理を依頼した。
2:メンテナンスは部品の調整が悪いと判断したので、製造に2時間程度で修理が完了すると連絡した。製造は2時間程度の停止ならば、生産管理に連絡して生産計画を変更する必要がないと判断した。
3:メンテナンスは部品を調整したが、実際には部品が破損していたため、修理が出来なかった。破損した部品の予備が無かったので、外部の業者に部品を発注したため、修理が完了するまで24時間も掛かってしまった。
4:製造はメンテナンスが生産計画に連絡したと思っており、メンテナンスは製造が生産計画に連絡したと思っていた。そのため生産管理に連絡が行かず、生産計画の変更が行われなかった。
このように機械の修理が当初の予定より多くの時間が掛かってしまったのですが、誰も生産管理に連絡しなかったため、生産計画の変更が出来ず、納期遅れの問題が発生したのです。
2:自責の考え方を植え付けろ
私は製造の管理者に今回の問題の対策を協議するように指示しました。製造の管理者たちは集まって協議を行い、下記のような対策をまとめたのです。
問題の対策
1)メンテナンスは修理が当初の予定より時間が掛かると判断した場合は、すぐに生産管理に連絡を行う。
2)生産管理はメンテナンスから連絡を受けたら、直ちに生産計画を変更して製造に連絡する。
製造の管理者たちは「この対策をメンテナンスと生産管理が守れば、今後は納期問題が発生しなくなります」と説明しました。私は「君たちはメンテナンスと生産管理だけが悪いとの前提で対策を立案しているが、製造の管理者には問題はなかったのか」と製造の管理者の責任を下記のように指摘したのです。
管理者への指摘事項
1)製造の管理者は機械の修理が予定時間内に完了するようにフォローする責任がある。もし予定時間内に修理が完了しなかった場合、その理由をメンテナンスに確認して、再度修理の完了日時を明確にする義務がある。これを怠ったのはなぜか。
2)製造の管理者は生産計画通りに製品を生産する義務がある。従って機械が停止した場合、すぐに生産管理に連絡して生産計画の変更の確認を行う義務がある。メンテナンスが生産管理に機械停止を連絡するルールとなっていても、メンテナンスの連絡の確認と、生産計画の変更の確認を行う責任がある。これを怠ったのはなぜか」
私はこれらの指摘を行い「今回の問題はメンテナンスにも問題があるが、製造の管理者が、果たすべき責任を怠ったために発生したのだ。この対策を今すぐ協議せよ」と指示したのです。
私の研修では問題発生時には他責だけではなく、必ず自責の考え方で対策を立案させています。他責の対策だけでは、他部署の非難だけに終わってしまうし「言ったけど守ってくれなかった」と問題が再発するからです。自責の考えで対策を立案させれば、自分自身の管理技術が向上するし、問題の再発防止に役立つのです。管理者の育成のためにも管理者には自責の考え方を植え付けることが必要なのです。