実践!生産革新道場:管理者はルールだけで動くロボットではない
1:ルールを逆手に言い訳をした
ある工場で機械のトラブルが発生して製品が不良となる問題が発生しました。この製品は客先クレームが頻発しているので、管理者に「作業員が作業標準書通りに作業を行なっているかを1日に3回は確認せよ」とのルールがあったのです。
私は現場で問題となった機械を確認して、担当の管理者に次のように詰問しました。「今回発生したトラブルは機械の日常点検チェックリストに確認項目があるぞ。2日前から異常ありと記入してあるが、対策は行ったのか」「作業員が異常の報告に来なかったので、私は異常が発生しているとは知りませんでした。」「管理者は日常点検チェックリストを毎日、確認するルールになっているのではないか」「いや違います。管理者は1週間に1回チェックするルールです。問題が発生したのは2日前ですから、私はまだチェックを行っていません。」「管理者は1日に3回は現場で確認するとのルールがあるが、チェックリストを確認しなかったのか」「ルールでは作業標準書と作業を確認せよ、となっています。ですからチェックリストは確認していません」管理者はこのようにルールを逆手に取って言い訳を繰り返したのです。
2:管理者の言い訳の詳細とは
今回の問題は管理者が日常点検チェックリストを確認していれば、未然に防げていたのです。しかし管理者は次のような言い訳をしていました。
管理者の言い訳
1)日曜点検チェックリストのルールでは管理者は1週間に1度のチェックと規定されているので、2日前からチェックしなかったことは問題ではない。
2)現場には毎日3回行くルールがあるが、ルールでは作業標準書と作業の確認となっているので、日常点検チェックリストは確認する必要はない。
この工場では一部の管理者が「言われたことしか仕事をしない」との風潮がありました。そこでルールで管理者の行動を細かく規定しようとしたのですが、管理者は逆に「ルールで規定されていないからやらない」と開き直ってしまったのです。このような管理者をルールで従わせようとすると、ルールの改定を何回も繰り返すことになり、結局は管理者がルールの抜け穴を見つけて、言われたことしかやらないとなってしまうのです。
3:管理者は常識とルールで行動させろ
私は今回の問題の対策として、管理者を集めてルールに付いて下記の要旨で講義を行いました。
1)ルールの意味と目的を理解せよ
管理者は「ルールとは最低限守るべき事柄の規定」であることを理解しなければいけません。ルールを設定すると「ルールは守らなければいけない」と考える人と「ルールだけ守れば良い」と考える人がいます。ルールとは最低限の事柄しか規定していませんから、管理者はルールの目的を理解して、ルールに規定されていなくてもその目的に沿った行動を取るべきなのです。
2)常識とルールで行動せよ
管理者はルールだけで動くロボットではありません。管理者は常識とルールで行動するのです。前述した通りルールとは最低限守るべき事柄の規定ですから、管理者は常識を中心にしてルールは補足として行動すべきなのです。管理者としての常識とは言うまでもなく、生産性を向上させて会社の利益を向上させることですから、これに従って行動すべきなのです。
このように「ルールだけを守ればよい」と考えて、仕事の手抜きをする管理者を出さないためにも管理者には常識とルールで行動することを正しく認識させる必要があるのです。