実践!生産革新道場:管理者の言い訳の2つのパターンを分析せよ
1:言い訳をする管理者
ある駐在員から次のような相談を受けました。「現地管理者が言い訳ばかりして困っています。問題が起こるたびに管理者の責任を追及しているのですが、言い訳して自分を正当化しようとするのです。明らかに管理者のミスで問題が起きていても、他人のせいにするために、効果的な再発防止が行えないのです」「先日もラインに入ったばかりの新人がミスをしたため、不良品が発生した件を注意したのですが、新人には班長が作業教育を行なっており、その証拠書類もあると言い張るのです。それでは新人がなぜ間違えたのかと指摘すると、班長と新人が悪いと言い出すのです」
2:言い訳の2つのパターン
日本人駐在員が嘆いているように、管理者の言い訳により問題の対策が行えないケースがあります。彼らの言い訳のパターンは「責任転嫁」「問題のすり替え」の2つとなります。
1)責任転嫁
自分に責任が及ぶことを恐れるために、あらゆるものに責任を転嫁します。新人がミスをした場合でも「作業を教えるのは班長だ」「作業を覚えない新人が悪い」などと個人の責任に転嫁してしまいます。
責任転嫁による悪影響
問題の再発防止が行えない
「新人は学歴も低いので、仕事を教えても理解しない」と管理ミスを個人に転化してしまうと、管理ミスの対策が行なえず、結果的に問題が再発することになります。
他の人も責任転嫁する
管理者が責任転嫁をするとその部下や周りの人も「責任転嫁すればよいのだ」と考えてしまいます。管理者が「班長の教え方が悪い」と責任転嫁すれば、班長を注意しても「教えたけど、理解しない作業員が悪いのだ」と管理者の真似をして責任転嫁して逃れようとします。
現場で問題が多発する
当然のことながら部下に責任転嫁する管理者は、部下からの信頼を失います。そのため職場では管理者に対する不信が蔓延します。管理者が指示を出しても、部下がそれを守らなくなり、問題が発生しても管理者に報告しないなど、問題が多発することになるのです。
2)問題のすり替え
新人がミスした問題で管理者の責任を追求すると「新人のミスの問題よりも、こちらの問題の方がもっと大きいのです」と問題をすり替えてしまうことが良くあります。「新人のミスより工程内の機械が故障しており、こちらの方が重大だ」と問題をすり替えるパターンや「納期が厳しいので新人を教えている時間がない。生産計画を見直すべきだ」と問題の担当部署をすり替えてしまうパターンもあります。
問題のすり替えの悪影響
1.確認時間のロスが増える
問題のすり替えは管理者が思い付きで言っていることが多いので、確認するのに時間が掛かってしまいます。「機械はいつから壊れているのだ。修理はいつ完了するのだ」と聞いても思い付きですから、正確な答えが出てきません。生産日報や修理依頼書などのデータを確認する時間が掛かる上に、確認すると僅かな停止時間で生産に影響が無いことが判明するなど、時間のロスに終わるケースも多いのです。
2.効果的な対策が立案できない
他部署の問題にすり替えた場合はその部署の担当者を呼んで確認することになります。お互いの責任を認め合い、今後の対策を真摯に話し合うのなら良いのですが、実際には責任転嫁した方とされた方で責任のなすり合いと言い争いが始まり、中途半端な対策しか出来ないことが多いのです。
このように言い訳する管理者を放置すると、当人の管理能力が向上しない上に、問題の再発が起こってしまいます。次回のコラムでこの対策を紹介します。