管理者が生産性向上に積極的に取り組む手法とは
1:生産性向上は管理者の積極性が大事
前回のコラムでは、生産性向上が進まない2項目の理由「生産性向上のアイディアがない」「管理者が生産性向上に反発する」を解説しました。そして「管理者が生産性向上に反発する」理由として「作業員から文句を言われる」「欠勤時の対処が難しくなる」「4M の変化点管理が増える」の3項目を解説しました。私の研修でも生産性向上のプロジェクトを指導していますが、初期の段階では生産性向上のアイディア出しより、管理者に生産性向上に積極的に取り組ませることに主眼をおいています。
2:管理者の積極性を高めるポイント
生産性向上の最大のポイントは、管理者が納得して積極的に取り組むように仕向けることです。そのため私の研修では下記の3項目を管理者に教えるようにしています。
1)生産性向上の必要性を納得させる
生産性向上は会社の利益のために行います。しかし会社の利益のためと強調すると、「生産性向上に取り組んでも、会社だけが儲けて自分は損をする」と勘違いする管理者もいるのです。ですから、私の研修では生産性向上は会社の利益に繋がり、会社の利益は自分の利益に繋がることを、具体事例を交えながら説明して理解させます。自分の家族の生活のためには安定した給与が必要であり、そのためには生産性向上は絶対に必要であることを心情的に納得させるのです。
2)作業員の反発時の対処方法を理解させる
管理者が生産性向上を嫌がる大きな理由は、作業員から「仕事が増えた」「疲れるようになった」と文句を言われることなのです。ですから、私は生産性向上を行う際には次のように説明して、作業員の文句の対処方法を理解させるように指導します。
2.1) 生産性向上には必ず反発する
前回のコラムにも書いた通り、生産性向上の対策を実施すると手待ちが無くなったり、作業方法が変わるため、作業員は戸惑って「疲れた」とか「仕事が増えた」とか文句を言うことがあります。これは作業環境が変化した時に誰でも感じることなのです。このように管理者には生産性向上を行う際には作業員から反発がるのは当たり前であることを理解させます。
2.2)2週間は作業を継続させる
作業員が反発した段階で元に戻してしまったら、生産性向上は失敗してしまいます。作業員の反発は慣れの問題ですから、2週間もすれば新しい作業方法に慣れてしまいます。ですから管理者は作業員が反発した段階で「今は慣れていないから疲れたように感じるのですよ。取り敢えず2週間続けてみましょう」と説得して継続させることが必要なのです。
3.作業員の意見をよく聞く
作業員に新しい作業が慣れるまで継続させることは大事ですが、同時に作業員の意見を聞くことも大事です。管理者が作業員の意見を聞かずに「この方法でやれ」と強制的に実施すると、作業員は感情的に反発します。生産性向上の対策を実施したあと、管理者は作業員を感情的に納得させるために、現場で新しい作業方法の意見を積極的に聞くようにさせます。私の研修では管理者にノートを持たせ、作業員の意見をメモさせます。
「工具の位置が遠いので取り難い」「新しい治具が使い難い」など、すぐに改善できることは、直ちに改善させます。これにより作業員は管理者が自分たちの意見を聞いてくれると感じて生産性向上に納得するようになるのです。もちろん単に疲れたとか元に戻して欲しいと言い出したら、前述の通り作業員を丁寧に説得するようにさせます。
このように管理者には生産性向上の必要性を感情的に納得させることが大切です、そして作業員からの反発時の対処方法を指導することにより、管理者の生産性向上に対する心理的な抵抗を軽減させることが大事なのです。