実践!生産革新道場:生産性向上のプロジェクトでは改善の分類がポイントだ
1:プロジェクトの改善内容が乏しい
ある工場の日本人駐在員から次のような相談を受けました。「私達の工場では生産性向上nおために管理者にプロジェクトを組ませて改善活動をさせています。毎月、改善結果の発表を行っているのですが、残念ながら作業員や班長でも考えることが出来る改善しか出てきません。各課の代表が集まってプロジェクトとして行っているのですから、もっと効果のある改善結果が欲しいのです」私はプロジェクトの関係者を集めて改善結果の資料を持ってこさせました。「この課ではどのような改善を行ったのだ」「私の課ではムダ取りを中心に行いました。以前は朝の清掃時に床を拭くモップが見付からず、探すことが多かったのです。そこで、モップの置き場所を決めて表示を行うことにしました。これによりモップを探すことが無くなり、探すムダが減ったのです。」「私の課では機械の日常点検時にゲージを目視で確認していました。しかし、ゲージの目盛りが見難かったのです。そこでゲージのメモリに印を付けて簡単に異常が分るようにしたのです」「私の課では班長が忙しい時に応援者が入った際に、作業員が応援者に作業を教えていました。そのため応援者が作業を間違えて、生産性を悪化させたことがあったのです。そこで改善として作業員が作業を教えることを禁止して、班長が必ず教えるように決めたのです」
2:個人レベルの改善が混在していた
このように生産性向上プロジェクトの改善内容を確認したところ、個人で出来る改善ばかりだったのです。私は「モップの置き場所を決めて表示するなどは、プロジェクトで協議しなくても個人で出来る改善ではないか。」とメンバーに指摘しました。するとメンバーは「プロジェクトのテーマはムダ取りですから、置き場所を明確にすることによりムダが減ったはずです。ですからこれはプロジェクトの改善だと思います」と言い出しました。私はメンバーがプロジェクトとしてあるべき改善を理解していないと判断したので、メンバーを集めて次のように説明したのです。
3:改善を分類してメンバーに理解させる
君たちの生産性向上プロジェクトでの改善は次のように3種類の改善が混在している。まずこの3種類を明確にしよう。
1.改善ではないもの
「ルールを守っていないので、守らせることにした」「壊れた機械を修理した」など、異常を正常に戻したものは改善ではない。今回のケースでは「作業員が応援者に作業を教えているので、それを禁止して班長に教えさせることにした」とあるが、ルールでは班長が応援者に教えることになっているのだから、単なるルール違反であり、班長を指導すべき事柄である。
2.個人レベルの改善
個人レベルの改善とは管理者として自分の判断と行動で行える改善だ。今回のケースでは「モップの置き場所を明確にする。」「ゲージに目印を付ける」などは、他の部署のメンバーと相談しなくても、自分で考えたり決めたりすることが出来る。このような改善はプロジェクトとして話し合う必要はなく、自分の判断で行えば良いのだ。
3.プロジェクトレベルの改善
自分一人の判断や行動では出来ないから、他の人と協力して行う改善がプロジェクトの改善だ。基本的には、「材料」「方法」「機械」「人」の4M変更に関する改善が中心となる。作業方法を変更したり、機械にポカよけを取付けるなど、他の協力を得て行う改善がプロジェクトの改善なのだ。
このように現状の改善を3種類に分類して説明したところ、メンバーも「なるほど、プロジェクトでは個人レベルの改善が多くありました。これからは4Mに関してメンバーと協力しながら新しい改善を考えます」と納得したのです。このように生産性向上の改善でレベルが混在している場合は、改善内容を分類してメンバーに理解させることが大切なのです。