実践!生産革新道場:物的証拠で嘘つき管理者を指導せよ
1:追及の手を緩めた日本人駐在員
ある工場でネジの締め忘れの不良が発生したため対策会議を行っていました。管理者は原因に付いて協議していましたが、日本人駐在員が「最近、多くの新人が入っているが、不良の対象ロットの作業を行ったのは新人ではないのか」と指摘しました。すると、製造の管理者が「確かに新人が作業を行っていました。班長が新人の作業指導を適切に行わなかったために不良を発生させてしまいました。私の責任で班長に指導を行い、再発防止を徹底させます。」と答えました。日本人駐在は「なるほど。やはり新人だったのか。それでは再発防止を徹底するようにして下さい」と対策会議を終わろうとしたので、私は慌てて「ちょっと待ってください。」と割って入ったのです。
2:管理者が嘘を付いてごまかした
私は管理者に「君は新人が作業を行ったと言うが、その証拠となる記録はどこにあるのだ.当日の作業日報を確認するから、直ぐにここに持ってきなさい。」と指示しました。管理者は「作業を行ったのは確かに新人です。」と言い張るのを無視して「私は作業を行ったのが新人かどうかを聞いているのではない。作業日報を直ぐに持ってこいと言ってるのだ」「作業日報はすでに事務所に保管してしまいました」「それでは一緒に事務所に行き確認しよう」私は対策会議に参加した管理者を引き連れて事務所に行き、当日の作業日報を確認させました。すると対象ロットは新人ではなく、通常の作業員が行っていたことが判明したのです。
3:怒鳴りつけて嘘つきを牽制
私は管理者に「お前は作業を行ったのは新人だと言っていたが、日報では通常の作業員となっているぞ。お前は嘘を付いたな!なぜ新人だと嘘を付いたのだ」と糾弾しました。管理者は、「いや嘘を付いたのではありません。勘違いをしてしまったのです」と言い訳を始めました。私は管理者の態度から勘違いなどではなく、完全な確信犯と判断して「いや、勘違いではない。新人だと嘘を付けば他の原因を追及されず、対策は班長への教育だけとなり、仕事が楽になると考えたのだろう!」と怒鳴りつけたのです。もちろん管理者は認めませんでしたが、私は他の管理者の前で怒鳴りつけることにより、今後、嘘の報告をさせないような牽制効果を狙ったのです。
4:物的証拠で嘘つきを指導せよ
このように問題発生時に上司の考えに沿うような嘘を付けば、上司は「やはりそうだったか」と気分が良くなり、叱られたり他の原因を追求されることがなく、仕事が楽になると考えている管理者もいます。特に日本人管理者にとって相手がミスを認めたり、素直に謝ったりすると、「相手は反省しているな」と感じて追及の手を緩めることが多くあります。管理者の中には、この日本人駐在の感情を逆手にとって「本当は違うけど、とりあえず認めてしまえば追求されずに済む」と考えている人もいるのです。
問題発生時に自分が立てた仮説が周りの管理者にスムーズに受け入れられた時は、安心するのではなく、逆に「これは罠ではないだろうか」と疑って、データを確認したり、現物などの物的証拠を確認することが大切です。私たちが常に物的証拠の裏付けを取るとの姿勢を見せることにより「この人を騙すことは出来ない」と思わせるようになれば、嘘を付く管理者はいなくなるのです。