実践!生産革新道場:第372回:成長する管理者の見極め方(2)
1:管理者の成長が企業の成長
私は企業とは管理者の能力以上に発展することはないと思っています。管理者の能力の限界がその会社の発展の限界です。もし社内に次のような管理者が溢れていたらどうでしょうか。「問題が発生しても相手に責任を擦り付け合う」「問題が発生しても現場に行かず、担当者を自分の机に呼びつけて状況を把握しようとする」「部下に指示を出しっ放しで、現場で指示の確認をしない」「出した指示が現場で守られていないと、部下が悪いと一方的に怒る」「現場で部下たちと対策を協議するより、パソコンの資料作りを優先させる」もし会社がこのような管理者ばかりになってしまったら、現場力は下がる一方で、生産性も向上せず、品質問題が多発して経営を圧迫することになります。
会社を発展させるためには管理者の能力を高めることが絶対に必要です。前回のコラムでは私の研修で管理者として成長する人として「問題の深堀りが出来る人」「悪い情報を積極的に報告する人」を紹介しましたが、今回はその続きを紹介します。
2:成長する管理者の見極め方
学校では学生の学力を同じレベルに高めて行くのが目的となりますが、会社の研修では依頼先の利益を上げると言う目的がありますから、伸びそうな人をえこひいきして能力を高めることが大切です。その意味では成長する人を見極めることは、とても大事なのです。
1) 問題の対策をその場で協議する人
品質問題の原因を調べて行くと、製造だけの問題ではなく、品質管理や生産技術そしてメンテナンスや生産計画も絡んでいる複雑な問題であることが分かりました。私が管理者に対策を指示すると、答えに二つのパターンがあります。一つは「複数の部署が関わっているので、後日関係者を集めてミーティングを行い、対策を協議します。次回研修時に対策の内容を報告します」と問題の解決を先延ばしにするパターンです。そしてもう一つは「複数の部署が関わっているので、今すぐ関係者をここに呼んでこの場で対策を協議します」とその場で対策を協議してしまうパターンです。もちろん後者の管理者は間違いなく成長します。このタイプの管理者は関係者を現場に集めた方が、現状を正しく理解できるので、対策も早くまとまることを理解しています。そして日頃から他部署の人とも良い人間関係を築いているため、電話1本で直ぐ相手が現場に来てくれるのです。
2) 「取り敢えずやってみよう」と言う人
私が管理者に「少し難しいかもしれないが、このような対策も必要だ」を指摘した時に相手の答えに二つのパターンがあります。一つは「その対策は出来ません。なぜなら、このような理由があるからです」と延々と出来ない言い訳を説明するパターン。もう一つは「確かにこれは難しいと思いますが、取り敢えずやってみます。やってみて、もし問題が出れば対策を協議します」と取り敢えずやってみるパターンです。この場合も後者の管理者は成長します。問題の解決に繋がるのならば、多少難しいことや、自分の負担が増えてもやってみる人は成長するのです。
管理者が会社に与える影響は大変大きなものがあります。私の研修先で生産性が悪い部署がありました。研修で問題の対策をまとめさせたのですが、管理力が低いために対策内容が作業員まで伝わらず、数字が改善されませんでした。私は「この管理者は無能だ」と判断して、社長に優秀な管理者との交代を進言して断行して貰いました。するとたちまち生産性が向上したのです。このように人の能力を見極めることは、とても大事です。私達は経営者として自分なりの人の見極め方を持ち、優秀な人は徹底的な教育を行ってさらに成長させて行くことが大事なのです。