実践!生産革新道場:第240回:工場管理は100点満点か0点しかない
1:管理が出来ていると思っていた
ある工場で現場力を向上させるために班長の研修を行いました。私は各ラインに設置されている生産管理版について次のような説明を行いました。「生産管理版は数量管理を行うために大事であり、次の3項目がポイントである。
1)決められた時間通りに数量を記入する。
2)目標値と実績値で差異が発生したら、直ちに原因と対策を記入する。
3)もし実績値が目標値より下回ったら、異常が直ぐに分かるように赤色で記入する。
このように説明を行ったあと、班長たちに「現場でこの3項目を守っていますか。」と質問したところ、全員が守っていますと答えたのです。「それでは現場で確認しましょう。」と班長と共に現場で生産管理版を確認したところ、半分以上が「時間通りに書いていない。」「差異があるが原因と対策を記入していない。」などの問題があったのです。
2:班長へのインタビュー
班長たちは嘘を付いたという意識はなく、生産管理版の管理は本当に出来ている、と信じていたのです。ここに管理上の大きな問題があります。なぜ班長たちは出来ていないことを出来ていると理解していたのでしょうか。私は班長にインタビューしてその原因を探ったところ、次の事柄が分かったのです。
1)生産数量の記入
この工場では生産管理版に班長が1時間ごとに数量を記入するルールとなっています。しかし数量を正しく記入していない生産管理版が数多くありました。班長たちは、「全部は書いていなかったが、多少は書いたのだから生産管理版を管理している。」「数量を書くつもりはあったのだが、忙しくて書けなかった。」と答えました。
2)原因と対策の記入
生産管理版で目標値と実績値の差異が発生した場合は、直ぐに原因と対策を生産管理版に記入するルールとなっています。班長は「すでに現場で原因を把握して対策を行ったが、忙しいので生産管理版には後で書けばよいと思った。」と答えたのです。
3:100点満点の管理を行え
班長たちは嘘を付いたという意識はなく、「全部は書いていなかったが、多少は書いていたし、書くつもりはあったのだから、生産管理版の管理は出来ているのだ。」と信じていたのです。班長がこのレベルでは現場力は弱くなってしまいます。私は班長を集めて次のように説明しました。「君たちは生産管理版を多少は書いていたし、書くつもりでいたから、テストで言えば80点で合格だと思っていたのでしょう。
確かに学校のテストならば80点で合格だが、工場管理では完璧に出来ていなければ0点で落第です。なぜならば、工場管理では僅かなミスでも不良の発生や納期の遅滞などの問題が発生するからです。工場管理は学校のテストと違い、100点満点か0点かの2つに1つしかないのです。管理者は常に100点満点を取る管理をしなければいけません。そのためには決められた管理のルールは絶対に守ることが必要なのです。」このように学校のテストの例えを使って班長に工場管理の基本を理解させました。工場管理では僅かなミスが致命傷になることがあります。管理者は常に100点満点の管理を行うことが必要なのです。