実践!生産革新道場:品質改善と生産性向上で異なる指導方法とは
1:生産性向上と品質改善の指導方法の違い
私の定期研修では品質改善と生産性向上が主なテーマとなります。品質改善の場合は現場で実際に発生している問題を取り上げて、現場で原因を分析させ、対策を立案させることにより、管理者の問題解決能力を高めて行きます。生産性向上の場合は管理者にプロジェクトチームを作りテーマを与え、それを毎月指導して行く方法で行っています。
定期研修では1日の間に数多くのテーマ取り上げますから、午前中に客先クレームと工程内不良を取り扱い、午後から生産性向上プロジェクトの指導などの品質改善と生産性向上を並行して行うのが普通です。この品質改善と生産性向上ですが、講師として指導方法に大きな違いがあります。その違いとは品質改善は回答が無いが、生産性向上は回答があるということなのです。
2:品質改善は回答を見付ける指導
私の研修では品質改善は「客先クレーム」「工程内の突発不良」「工程内の慢性不良」をテーマとして取り扱います。品質改善の場合は原因を分析したが、原因が特定できないために再発防止の対策が打てないとか、原因に確証が無いため、対策の効果が分からないなど、「これが正しい」との回答が無いケースがほとんどです。研修先の工場が回答を持っていないので、私の研修では管理者にこの回答を見付けさせる指導方法が中心となります。管理者と共に現場に行き、作業員にインタビューさせ、作業を観察させ、データを確認させて真因を探り、再発防止の対策を立案させます。すなわち研修で品質改善の回答を作成するのです。
3:生産性向上は回答に誘導する指導
生産性向上の場合は品質改善と異なり、研修先の工場が「これが正しい」との回答をすでに持っているのが普通です。「どうしたら生産性が向上するか全く分かりません。教えて下さい」との依頼は過去に1度もありません。研修先の工場では「この工程がネックだから、このように改善すれば生産数量が上がる」「レイアウトの変更による間締めを行えば、1人削減することができる」「この箇所を自動化すれば、1人削減できる」などと、既に正しい回答があるのが普通なのです。しかし回答がありながら、管理者が言い訳ばかりして進まないから「生産性向上を管理者自身で推進させて欲しい」との依頼となるのです。私としては既に正しい回答が出ていますから、その回答へ向かって管理者の言い訳を封じて、モチベーションを上げ、細かい問題を解決する指導が中心となります。
4:テーマによって指導方法を使い分ける
品質改善ではクレームや突発不良は管理ミスによるものが多いので、効果的な再発防止の対策は行えるのですが、慢性不良は複雑な要因が絡んでいるため、セオリー通りに進めても効果が出ないことがあります。何もしないでも悪くなったり良くなったりすることもあります。しかし、生産性向上はセオリー通りに進めて行けば必ず数字で結果が出ます。そのセオリーも特に難しいことはなく、ムダ取りの基本を理解していれば、「これが正しい」との回答を得ることが出来ます。
私も現場を見てムダがあれば日本人駐在員に「こうすれば生産性が上がりますよ」とアドバイスしますが、「それは分かっています。私もそう思っています。しかし管理者が動かないのです」と言われることが良くあります。多くの工場にとって品質改善は「これが正しい」との回答が見付からないことが問題であり、生産性向上は「これが正しい」との回答が分かっていながら、前に進まないのが問題です。私の研修ではこの違いを見極めて、指導を行うように心掛けているのです。