実践!生産革新道場:第266回:代理や応援者の言葉に惑わされるな
1:班長代理の判断ミス
ある工場で現場の様子を観察していたところ、ラインが止まっていました。私はすぐに管理者と共に状況を確認したところ、継ぎの事柄が判明したのです。
1:生産管理から「次のロットは一部の部品が足りないために、先にその次のロットを生産しろ」との指示が出ていたが、班長は指示の内容を理解していなかった。
2:班長は部品が足りないロットを生産させた。そのため生産途中で部品が足りなくなり、生産ラインが止まってしまった。
私は管理者に「なぜ班長は生産管理の指示を理解しなかったのだ」と質問したところ、
「彼女は班長ではありません。班長代理です。このラインの班長は産休のために2ヶ月前程から欠勤しています。そこで、作業員のから班長代理を選出して作業を任せていたのです」と言い出したのです。
2:必要な教育を怠った
このラインでは班長が産休に入ったため、隣のラインの班長が兼務を行っていました。しかし1人で2本のラインは負担が大きいため、急遽作業員から班長代理を選出して班長のアシスタントとして管理作業の一部を行わせていたのです。私は「この班長代理は、生産計画変更時の伝達方法や手続きを理解していなかったのではないか。班長代理に班長として必要な知識の教育は行ったのか」と質問しました。すると管理者は「作業員から班長に昇格した場合は班長への知識や技術教育、そしてOJTのシステムがありますが、班長代理には特に教育を行っていません。」と答えたのです。班長代理は暫定処置であり、班長代理にはアシスタント業務だけで重要な判断は任せていないので、教育の必要はないと判断していたのです。
3:異常が分からない班長代理
班長が欠勤した際に、作業員が班長のアシスタントを行うケースは良くあります。班長のアシスタントには判断業務は行わせず、判断すべき事柄が発生した場合は上司に報告して、その指示を仰ぐのが一般的です。この工場でも同様に行なっていましたが、班長代理が生産計画変更時の伝達方法や手続きを理解していなかったため、上司に報告しないまま生産を指示してしまったのです。私は管理者に「班長代理には判断業務を行わせず、異常発生時には上司に報告せよと指示している。しかし今回のケースのように生産計画の変更など異常が発生しても、班長代理は生産計画の変更自体が分からないのだから、異常と判断出来ないし、報告することも出来ないぞ」と指摘したのです。
4:代理と言えども教育が必要
今回のケースは班長代理に適切な教育を行わなかったのが主な原因と言えます。各社とも正規の昇格時には知識や技能の教育システムがありますが、今回のように暫定的な代理の場合や他部署から班長が長期間応援に入った場合などの教育は行われていないことが多いのです。私は管理者に対策を協議させ、今後は代理や長期応援の場合には通常の教育システムを転用させるとことなりました。代理、暫定、一時的、応援者などの言葉が付くと何となく、「一時的だから」と考えてしまいますが、ここに問題の芽が潜んでいることが多いのです。代理や応援者と言えども、異常が理解できて対処できる知識を教育しておくことが大切なのです。