実践!生産革新道場:第62回目:自責の要因解析図を作れ
1:要因解析図が役に立たない
会社でQCC活動を行っています。QCCストーリーの通りに特性要因図で原因を探して対策を考えているのですが「作業ミスがある」「眠いから作業ミスをする」「対策は早く寝る」など子どもの遊びみたいな内容となっており驚きました。どこで間違ってしまったのでしょうか。
2:要因解析図は使い難い
QCC活動に限らず、日常の仕事でも問題が発生した場合は真の原因を解析することが大切です。問題発生時に真の原因を解析するために、魚の骨とかフィッシュ・ボーン・グラフと呼ばれる特性要因図を書かせることがあると思いますが、この使い方が難しいのです。私は指導先では下記の理由によりフィッシュ・ボーン・グラフはほとんど使わせません。
2.1:書き方に意識が集中する
特性要因図は横線の背骨を書いた後、主な要因の大骨、そして大骨の要因に当たる中骨、その原因となる小骨さらに孫骨と書いていきます。一見すると構成が複雑であるため正しく書こうとする方に意識が集中するため、肝心の要因を考える方が疎かになりがちです。
2.2:発想を固定してしまう
大骨から孫骨まで要因を考えながら分類して行くことは実際には至難の業です。発想を常に大骨の要因に固定しながら考えて進めるために、発想が固定されたり行き詰まったりしやすいのです。現実はブレインストーミングで大小様々な要因をランダムに考えさせた方が良いアイディアがでるものです。
2.3:スペースがアイディアを制限する
実際に書いてみれば分かりますが、魚の骨は意外と書き込めるスペースが少ないのです。そのため「スペースも無くなってきたし、小さなアイディアは書かなくても良いな」となってしまい、アイディアが制限されてしまいます。
3:効果的な特性要因図の作成方法
私が指導先で行っている方法は単純ですが極めて効果的です。
1:各自にA4の用紙を渡して4つ折りにさせる。
2:4つ折りを開くと4つの四角ができるので、そこに4項目の大要因を書かせる。
3:時間を区切り、各自に自由にアイディアを書かせる。
4:各自が書き終わったあと、グループにしてお互いに内容を発表させる。そして全員がディスカッションを行い、グループ毎に内容をまとめる。
この方法は自由な発想で要因を捉えることが出来る上に、全員でディスカッションをしてまとめるので、アイディアがよく練られるメリットがあります。
4:特性要因図は自責で書かせろ
出来の悪い管理者に要因解析させると、会社が悪いとの要因にしてしまうので注意が必要です。会社が悪いとなれば解決するのは自分ではなく会社となるため、自分は仕事をしなくて済むからです。例えば不良流出の要因解析を行うと次のパターンになってしまいます。
4.1悪い要因解析の例
要因1:作業員が検査の手抜きをしている。
要因2:仕事量が多いから早くするために手抜きをしている。
要因3:仕事量が多いのは会社が悪い。
また次のパターンも良くあります。
要因1:作業員が検査の手抜きをしている。
要因2:残業が多く、疲れているために手抜きをする。
要因3:会社は残業を減らすべきだ。
このように会社が悪くなってしまう要因解析を防ぎ、正しい考え方で要因解析を行わせるには、要因2で自責に切り替える習慣付けが必要なのです。
4.2:正しい要因解析の例
要因1:作業員が検査の手抜きをしている。
要因2:仕事量が多いから早くするために手抜きをしても良いとの雰囲気がある。
要因3:管理者が作業員の手抜きが出来ないような指導を行っていない、作業を改善していない。
要因を他責から自責に切り替える訓練を積み重ねて行くことにより、現場で使える実践的な要因解析が行えるようになります。