管理者に現場巡回をさせる方法
1:管理者が現場に行かない
読者の方からの質問をご紹介致します。
管理者がいつもパソコンの前に座っており、なかなか現場に行きません。もっと「現場に出ろ」と言うと、数日間は現場を一回りするようになりますが、また元に戻ってしまいます。管理者を現場に出すにはどのようにしたら良いのでしょうか。
2:勘違いしている管理者が多い
管理者というとエアコンの効いた個室でパソコンをいじりながら、部下を呼びつけて指示を出す。現地管理者の中には製造業の管理者をこのように勘違いしている人がたくさんいます。学歴の低い人間は手を動かし、自分のように学歴が高い人間はオフィスで頭を使うだけでよいと勘違いしている人も多いものです。このような人には単に現場に行けと言うだけでは意味がありません。意識面と行動面から変えるようにアプローチする必要があるのです。私の指導先にも現場に行きたがらない管理者はいますが、次のように徹底的に指導しています。
3:現場巡回の意識付け
最初に次のように説明して現場を廻ることの重要性の意識付けを行います。
3.1:現場がお金を生んでいる
当たり前ですが工場はものを生産して利益を上げているのですから、最も大事な箇所は製造現場なのです。極端に言えば他の部署や役職はお金を生み出す製造現場のサポートですから、現場が最優先されます。従って管理者が現場に出るのは当たり前のことなのです。
3.2:ルーティーンは仕事ではない
管理者の中には「忙しくて現場に行く時間がない」と文句を言う人もいますが、その仕事の内容は大半がサインをしたり、計画を立てたりするルーティンの仕事です。私は管理者に「ルーティーンは仕事ではなく作業である。ルーティンなら君が休んでも誰でも出来るのだ。そのようなものに時間を掛けてもらっては困る。もっと価値のある仕事に時間を掛けるべきだ」と説明しています。価値のある仕事とはお金を生み出す仕事、すなわち現場の改善に他なりません。
3.3:現場の仕事をやりやすくする
管理者の大きな役割のひとつは現場の仕事をやりやすくすることです。現場が問題なく品質の良いものがスムーズに生産できれば会社の利益は上がります。現場の仕事をやりやすくするには、管理者自らが現場に出て問題点を探り改善する必要があります。
3.4:作業体験が必要である
管理者は作業標準や品質基準などを決めたりすることが多いのですが、そのためにも必ず自分で現場に行き、作業を体験してみることが必要なのです。管理者は作業員より作業を早く行う必要はありませんが、作業のポイントは自分で経験して理解する必要があるのです。
3.5:優秀な管理者ほど現場に行く
優秀な管理者ほど問題点を探すために現場に出ている人が多いのです。これは日系企業に限ったことではなく、欧米企業でも優秀な管理者は現場に頻繁に出ています。
4:管理者
管理者に意識付けを行い、毎日少しづつでもよいので現場に行かせます。ただし現場に出るようになっても、物理的に歩いて帰ってくるただの散歩では意味がありません。現場を廻るとは現場を歩いてくることではなく現場で次の事柄を実施することを理解させます。
4.1:監督者、作業員に話しを聞く
監督者や作業員に感じている問題、困ったこと、不便なことなどを聞いて廻ります。特に作業員が困っている問題は潜在的な不良原因につながることが多いので、積極的に聞きだすようにします。
4.2:テーマを持って回る
本来、管理者が問題意識に溢れており、現場を見ただけで異常や問題点が分かればよいのですが、椅子に座ってばかりいた管理者では問題を見ても問題を思わないことが多いのです。このような場合は管理者の問題意識を高める必要がありますがこれは時間が掛かります。そのため私は問題式が希薄な管理者に現場巡回を行わせる場合は、テーマを決めて現場に行供養に指導しています。例えば今日は各課で最も多く出ている不良をテーマに巡回する。明日は安全管理をテーマに危険な箇所がないかを見て廻る、など自分でテーマを持たせて廻らせることにより問題を見る目が養われます。
5:日本人駐在員のフォローが必要
日本人管理者が行うべき事柄としては下記の通りです
5.1:現場巡回のOJTを行い習慣化させる。
当初は日本人駐在員が現地管理者と一緒に現場を廻り、OJTで現場巡回のポイントを指導することも大変効果的です。徐々にOJTの回数を減らして、最終的には現地管理者の現場巡回が習慣化するのが理想です。
5.2:現場巡回のフォローを行う
管理者が現場巡回の際にどのような問題を見つけたり、改善を行ったのか頻繁に確認するようにします。私が良く使う手法は監督者に管理者がどのくらいの頻度で現場に来て、どのようなことを聞き、アドバイスしているかを定期的に報告してもらうやり方です。監督者から管理者の現場巡回の様子を聞いて、これを管理者にフィードバックして行くと結構プレッシャーを感じて真剣に現場を廻るようになるものです。