正しい指示の出し方(その3)
当社ではタイ人管理職を対象としたセミナーを行っており、今回のテーマである「指示の出し方、受け方」のセミナーのご依頼も多くなってきてます。このセミナーは実際に私がご依頼先の会社行き、タイ人管理職の参加者と討議形式でセミナーを行うのですが、一見簡単なような指示の出し方でもなかなか理解されていないようです。セミナーでは指示書の書き方も学習するため実際に参加者が今までに書いた指示書を持ってきてもらい、お互いに指示書を交換して読ませてどのくらい理解できたか発表してもらうのですが、持ち寄った指示書の殆どが5W1Hを使用しておらず、口語体の文章となっているためとても分かりにくいのが現状です。このような口語体の指示書では漏れが多く理解しにくいため、練習として私が口頭で指示した内容を5W1Hを使い、指示書にまとめる訓練を数回行ってようやく理解してもらえるのですが、指示書一つ取り上げてもなかなか理解されていない現実を痛感しています。
さて前回はタイ人管理職にぜひ理解してもらいたい「正しい指示の出し方」として① 5W1Hを理解する ② 指示の理由説明する ③ 固有名詞、数字の確認の3項目をあげましたが今回はその続きとなります。
4 大事な指示は内線電話、人伝えではなく自分から現場に行き直接、指示をする。
「管理者とは肘掛け付きの椅子に座っているのが当たり前で、現場に行く必要がない。指示は相手を呼び出したり電話で行えばよい。」と勘違いしている管理者も実際に見受けられます。確かに外資系、タイのローカル会社に行くと管理者は制服を着用せずネクタイを締め、冷房の効いた個室に入って指示を出している姿を目にします。しかし日系企業では「現場第一主義」で管理者には実際に自分が現場に行き、自分の目で見て判断することを期待しています。現場は生き物であり常に変化していますから、指示書の内容も現場を見て担当者と話して、指示書の内容が本当に現場の状況に即しているかなどを確認して行くことも大切です。また指示を受ける側からしたら電話などで事務所に呼び付けられたりするより、上司が現場の自分の所まで来てくれた方が親近感が増します。この親近感は会社の雰囲気作り、コミュニケーションの上でとても大切ですから、この意味からも指示を出す人が相手の所へ行く方が良いのです。
また現場に行かず内線電話などで指示を出す管理者もいますが、電話ですと次の2点で誤解が生じる可能性があります。
① 相手の表情が分からない。
私たちは指示を出す時、相手の表情を見ながら「指示が本当に理解できたのか」「何か質問や意見があるのでは」「嫌そうな表情だが何か問題があるのでは」など細かいことを推測しています。電話ではこのような細かい判断ができにくくなります。
② 現場の状況が分からない。
指示が現場の状況と密接している場合は実際に自分が現場に行き、自分が現場の状況を確認したうえで指示を出した方がより的確な指示が行えます。また現場なら図面、現物などの現物を見せながらの説明も行えます。この他にも電話で呼び出して指示を行うと相手が萎縮してしまい、何でも「分かりました」と答えてしまう事があります。
また部下に頼んで指示を伝えてもらう「人伝えの指示」を行う管理者もいますが、これは一番悪い方法で「連想ゲーム」ではありませんが内容が歪曲されてしまいますし、指示を受け取った人が直ぐに質問できないので誤解が生じやすくなります。管理職が現場に行き、現場を一緒に見ながら相手に直接、指示を出すことはコミュニケーションのうえからも大事なことです。指示の間違いを防ぐためにもできる限り現場に行き、現場で指示を出す事を理解してほしいものです。