日本の品質管理の歴史を振り返る(その4)
当社では「タイ人向け社員教育ビデオの制作、販売」「社員教育コンサルタントとして契約先の企業でのアドバイス業務」そして「タイ人管理者セミナー」などを行っておりますが、最近は「日本人管理者向けのセミナーを行って欲しい」とのご要望が急増しております。このご要望は主に次の2つの理由によります。
1日本人の社長と日本人駐在員との意識のギャップ
日本人の社長はタイ人管理者はもちろん、日本人駐在員も使って仕事を進めて行くわけです。しかし社長が期待している日本人駐在員の役割に対して、現実の能力、意識、心構えのレベルが不足していると感じている社長が多いのです。特に「あと数年の駐在期間だから適当にやろう」「仕事をいくら行っても給料は同じである」「下手に仕事の提案などをして責任を持たされたら大変だ」「タイ人部下に仕事を任せたことにして、自分の責任をタイ人部下に押し付けよう」とのサラリーマン根性丸出しの駐在員の方もごく少数だと思いますが、現実にいらっしゃるようで、意識の面で「管理者としての自覚を持ってしっかりして欲しい」と思っている社長が多く、そのような方からの依頼が増えています。
2マンネリズムの打破
駐在生活も最初の1,2年は気合いも入って多少の困難は乗り越えて行くものですが、3年目に入るころから当初の意気込みも薄れてしまい、つい惰性に流されてしまいます。仕事上の改善点はいくらでもあるのですが「日常業務だけこなせばよい」となってしまい、日本人管理者としての存在価値が薄らいで来ている状況があります。心の中には「初心に戻ってがんばろう」との気持ちはあるのですが、どうしてもマンネリズムに負けてしまいます。そこで「初心に戻ってバリバリやるぞ」とのきっかけ作りに当社に日本人向けセミナーを依頼するケースも増えてきました。
このご要望に対応すべく当社では私自身が講師として相手先の企業に行き、日本人管理者のマンネリを打破して気合いを入れ直してもらい、タイ人部下の使い方、接し方の手法を学習してもらう「日本人管理者リフレッシュセミナー」を行っています。このセミナーを行って感じるのですが、やはり日本人駐在員の方は自分自身の管理方法も持っておられるし、真面目な方ばかりですから自己啓発のきっかけさえ掴めれば「よし!やるぞ」とすぐに勢いがつきます。その意味ではセミナーに限らず、異業種の人たちと話をしたり、本を読んだりするのも活力を得てマンネリを打破する良いきっかけになると思います。
さて品質管理の歴史ですが、前回では日本の品質管理導入時に反発が起きたことを書きました。この反発とほぼ同時期に日科技連の招きに応じてJ.M.ジュラン博士が来日しました。この世界的に著名な博士の講演を契機に品質管理への意識も徐々に変化を見せ、従来の工場現場で技術主体の品質管理から、経営全体に目を向けたものになり始めました。この考えが発展して行き、現場における作業者、監督者が共に学び品質管理活動を行おうとQCサークルが生み出されました。1962年には日科技連により雑誌「現場とQC」が出版され、この本が中心となりQCサークル活動の呼びかけを行いました。
①サークルの結成は上からの命令ではなく、自主的にやりたい人から初めて欲しい
②勉強して欲しい(自己啓発)
③視野を広くするために他のサークルと交流して欲しい
④最終的には職場全員の参加を目指して欲しい。
当初はなかなか浸透せず3年経った1965年の登録サークル数は3700程度でした。しかしQCサークルが上げためざましい成果に刺激され、その数は急増して行ったのです。