1:指示の確認方法が間違っていた
ある工場で薬品を取り間違えて生産を行ったため、品質問題が発生しました。私は管理者に原因を質すと「作業員がAの薬品を使うべきところ、Bの薬品を使ってしまったのです」と言い出しました。「私は部下にBではなく、必ずAを使うようにと口頭で指示しました。しかし部下は間違えてBの薬品を使ってしまったのです。本来このような指示は文章で行うべきですが、急な生産だったため電話で指示を行ったのです」私は管理者に「そのような重要な指示を口頭で伝えたのだから、指示を出した後に理解度を確認したのか」と質問しました。管理者は「もちろんです。私は部下に分かったかと聞きました。部下はハッキリと分かりました、と応えました」と言い出したのです。私は「部下に分かりましたか、と聞けば分かりましたと答えるに決まっている。そのような質問では理解度は確認できないぞ」と指摘して、指示の理解度の確認方法の指導を行ったのです。
2:指示の理解度を確認する手法
部下に指示を出した後「分かりましたか」と尋ねたら、「はい、分かりました」と答えるのが普通です。しかし分りましたと言うものの、当人は分かったつもりになっているが、実際には間違った理解をしていたり、「分りません」とは言いづらいため「分かりました」と答えてしまうケースもあるのです。時間や手間を掛けて指示を出しても、部下が分かっていないのであれば、指示を完了させることはできません。管理者は自分が出した指示を部下に確実に理解させる責任があります。そのためには指示を出した後、その理解度を確認することが必要なのです。管理者は次の3つの確認方法を正しく理解することが大切です。
1)復唱させて確認する
指示の内容を相手が正確に理解しているかを確認する最も有効な方法は、部下に指示の内容を復唱させることです。復唱の方法ですが、指示を出し終わってから全てを復唱させる方法と、指示のポイントだけを復唱させる方法があります。全ての指示を出し終わってから復唱させる方法も有効ですが、部下に日ごろから指示のポイントをその場で復唱するように教育しておくことも大事です。例えば「この資料を30部コピーして下さい」と指示を出したら「はい30部ですね」とその場でポイントを復唱させるように教育するのです。このように指示のポイントを復唱させることが習慣になると、指示の理解度の確認が容易になるのです。
2)質問をして確認する
指示した内容のポイントを部下に質問して理解度を確認する方法です。指示を出し終わった後、「この資料は何部コピーしますか」「コピーは誰に配布しますか」などと指示のポイントを絞って相手に質問して理解度を確認します。これは短い指示や急いでいる時などの確認方法には最適ですが、部下が「詰問されている」と不快感を感じることもあるので注意が必要です。管理者は日頃から「指示の理解度を確認するために、ポイントを質問して確認します」と質問の目的を明確にして理解させておくことが必要です。このポイントを質問して確認することを繰り返していると、部下は「この指示のポイントはここだな」と指示の大事な箇所が分かるようになるので、指示の理解度が深まるようになります。
3)レポートを書かせる
大きな仕事やプロジェクトなどを指示した後は、理解度を確認するためにレポートを書かせることも有効です。具体的には仕事やプロジェクトの目的や重要性、そして進め方などを簡潔に書かせるようにします。¬このレポートを書かせる際には、仕事やプロジェクトの重要性、進める上で気を付ける事柄なども自分なりに考えさせて書かせるようにします。特に予想される問題とその対策を事前に考えさせておくことで、スムーズに進めることができるようになります。部下は文章として指示の内容を書くことで、頭が整理されて内容を正しく把握できます。また自分なりに重要性を考えてみることで、より深く理解することができるようになるのです。