1:公差が間違った作業標準書を使用していた
私はある工場で品質改善の指導を行っていました。検査員が製品の寸法測定をしていたので、作業標準書を確認したところ、公差がずいぶんと大きいことが気になりました。私は管理者に「この寸法からすると、この公差の幅は随分と大きくないか。これで本当に大丈夫なのか」と質問しました。管理者は慌ててQCの担当者を呼び出して、詳細を確認しました。すると小数点の位置が一桁、間違っていたことが判明したのです。
管理者は「すみません。先日この作業標準書を改定したのですが、その際に記入ミスが発生したようです」と言い訳を始めました。加工の工程では作業員が作業標準書の順番と違う作業を行っていました。作業員に聞いたところ「作業標準書の順番で作業を行うとやりにくいので、時間がオーバーするのです」と言い出したのです。私は管理者に「お前たちは、どのような作業標準書の管理を行っているのだ」と厳しく指導を行ったのです。
2:精度の高い作業標準書を作成する手法
工場では品質、納期、コストのために精度の高い作業標準書を作成することが大切です。管理者は分かりやすく、間違いの無い作業標準書を作成する責任があります。管理者に精度の高い作業標準書を作成させるためには、次の3項目を理解させることが必要です。
1)誰でも分かるように作成する
作業標準書は管理者だけではなく、低学歴の作業員が読んでも分かりやすいように作る必要があります。分かりやすい作業標準書とは「視覚的に分かりやすい」「文章や写真が分かりやすい」の2項目となります。視覚的に分かりやすいとは、作業標準書のレイアウトのことです。文章や写真をできるだけ大きくして、その配置も分かりやすくすることが必要です。
文章は難しい言葉や抽象的な言葉を使わず、誰でも簡単に分かるように表現します。写真も作業の重要なポイントがはっきりと分かるような角度から撮影したものを使用します。作業員が作業標準書を見たときに「これは分かりやすい。これなら作業標準書を守れる」と感じられるような、分かりやすい作業標準書を作ることが大切です。
2)数値の基準を明確にする
作業標準書には基準値や公差など多くの数値が使われますが、この出所や算出方法を明確にします。特に社内で公差を決める場合は、その公差を算出した責任者と算出方法や理由を明確にしておきます。そして算出データも保管して置くことが必要です。これにより作業標準書の信頼性が担保できますし、外部監査時に監査員からの質問にも適切に答えられるようになります。
作業標準書を改定するときには、数値を変更し忘れたり、数値の転記ミス等が発生しやすいので、作業標準書の改定時には数値の管理を徹底します。作業標準書には記入者や承認者のサインを入れる箇所がありますから、更新時にはこの担当者が必ず内容を確認して、正しく記入されていることを保証した上でサインをします。
3)作業員の意見を参考にする
作業標準書を作成する際には、担当部署の管理者が会議で決めることがありますが、これでは本当に使える作業標準書を作成するには不十分です。作業標準書を作成した後は、実際に作業員に使って貰い、本当に使える作業標準書であることを確認します。作業員に作業標準書を使った後に質問をすれば「この順番では不便である」「この持ち方では持ち難い」「こうした方がやりやすい」などの意見がたくさん出てくるはずです。
さらに必要に応じて、管理者自身が作業標準書を使い作業を行ってみます。自分で体験することで頭の中では気が付かなかったことが、分かることも良くあります。実際に作業標準書を使う作業員の意見を反映させることで、本当に現場で使える作業標準書を作成することが出来るのです。
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