実践!生産革新道場:管理者に勝手な判断をさせずルール通りの教育を行わせろ
1:出荷検査で寸法不良が発見された
ある工場で管理者と共に現場の管理状況を確認していたところ、梱包された完成品在庫が倉庫から運び込まれてきました。「あれは何のために運んできたのだ」と管理者に聞いたところ「実は出荷の抜き取り検査で寸法不良が発見されたのです。そのため完成品在庫を全て全数検査することになったのです」と答えたのです。私は直ぐに「あの製品の出荷状況は、どのようになっているのだ」と確認したところ、「昨日から生産を始めており、明日の出荷予定なのです。全数検査は昨日分も含めて行いますから、もし寸法不良が出てきたら修理と再検査を行うので、出荷はかなり厳しくなります。全数検査の結果次第では客先に納期について申し入れを行う必要があります」と答えたのです。
私は「全数再検査で最初の10個の検査が終わったら、その結果をすぐに報告しなさい」と指示しました。しばらくすると結果のデータが出てきました。内容を確認すると寸法不良が発見されていたのです。私は驚いて「この製品は工程内で抜き取りの寸法測定を行っているはずだ。そのデータを確認する」と管理者と共に測定箇所に行き、データを確認したところ、公差の上限値の製品があったのです。私は「データで上限値の製品があるが、具体的な対策は行ったのか」と確認したところ、何の対策も行っていないことが判明しました。私は「これは品質と納期に関わる大きな問題だぞ。なぜこのような問題が発生したのだ」と管理者に詰問したのです。
2:新人にルール通りに教えていなかった
このように工程内の抜き取り検査で上限値の製品が発見されていましたが、具体的な対策を行わずに生産を続けたため、出荷検査で寸法不良が発見されたのです。私は管理者を集めて状況を確認させました。すると次の事柄が判明したのです。
判明した事柄
1:この製品は昨日から生産が始まったが、工程内の抜き取り検査は新人が担当していた。
2:この新人は公差の上限値でも公差内には入っているので問題なしと判断していた。
3:抜き取り検査の結果は、終業時にラインの班長が確認してサインを入れることになっていたが、昨日から班長は欠勤していたため、誰も内容を確認していなかった。
3:管理者に勝手な判断をさせずルール通りに教育させろ
私は測定者の新人に注目して直接インタビューしました。新人は「上限値から外れれば異常ですから、上司に報告します。しかし上限値は公差に入っていますから、異常ではありません」と説明したのです。私は「新人がこのように理解しているのは、教育担当者の責任だ。担当者をすぐに呼び出して、新人に寸法測定に関してどのような教育を行ったか、資料と共に説明せよ」と指示しました。担当者が来たので問題の状況を説明して、どのような教育を行ったかを質問したところ「この製品の測定はとても難しいのです。そのため教育は寸法の測定が正しく行えるように、測定方法を中心に行いました」と答えました。私が「測定値で上限値や下限値が出た場合の対処はどうなっているのだ」と詰問すると「上限値や下限値が出た場合は寸法不良が発生する可能性があるので、上司に報告するルールとなっています」「そのルールを教育時に教えたのか」「教育は寸法測定を中心に行いました」「私はそのルールを教えたのか聞いているのだ。質問に答えよ」「今回の製品は過去に寸法不良が出たことがないのです」「私は寸法不良が過去に出たかを聞いているのではない。ルールを教えたか聞いているのだ。イエスかノーで答えよ」担当者は諦めて「未だ教えていません」と答えたのです。
今回の問題では教育担当者が「この製品は寸法不良が出たことがない」との先入観があったため、教えるべきルールを教えていなかったのです。私は管理者を集めて「部下にルールを守らせるのが管理者の大事な役割だ。教育では寸法測定の方法を教える技能教育と上限値や下限値、異常が発生した場合のルールを理解させる知識教育が必要だ。今回、教育担当者は寸法不良が無いからと勝手に判断して、教えるべきルールを教えていなかったのは大きな問題だ。」と指摘して対策を協議させました。管理者には新人の教育時に勝手な判断をさせず、ルールに従って教えることの重要性を理解させることが大切なのです。