実践!生産革新道場:第283回:私が研修で心掛けている3項目とは
1:研修に期待していることとは
今回は私の研修の対象と管理者の意識と行動を変えるために心掛けている3項目を紹介します。海外の日系企業は市場や環境の変化により、高品質、低価格、そして納期厳守を求められており、それに対応すべく工場ではさらなる生産性向上が必要となっています。しかし、生産性向上に取り組んでいても、効果が出ずに次の2項目で困っている工場も多いと思います。
1)生産性向上の方法とポイントが分からない
・ラインの人数削減などを行いたいが、どのラインが削減か可能か分からない。
・削減の対象箇所は判明しているが、どのように削減すれば良いのか分からない。
2)管理者が生産性向上に積極的に取り組まない
・人員削減の対象箇所も方法も分かっているが、管理者が「難しい」と取り組まない。
・管理者に削減を行わせても、文句を言って直ぐに元に戻してしまう。
2:研修で管理者の意識と行動を変えたい
私は1より2で悩んでいる工場の方が圧倒的に多いと思います。1で困っている場合には生産性向上のコンサルタントに依頼すれば、対象箇所を明確にして、管理者にデータの取り方、分析や対策の方法を教えてくれるはずです。しかし2の場合には「管理者の意識を変えなければダメだ。意識を変えるために研修に出そう」と考えるのが一般的です。しかし研修では知識を与えることはできますが、1回の研修で管理者の意識を変えて、行動を持続的に変えることは難しいのが現実です。私の定期研修では2のケースを対象としており、管理者の意識を変えて、行動を変えて、現場を変えて行くことを目的しています。
3:研修で心掛けている3項目
私の研修では管理者の意識と行動を変えるために次の3項目を心掛けています。
1)自責の考え方を徹底させる
人員削減の対策を考えさせると「機械が古いからムリだ」「作業員が疲れたと文句を言う」「作業環境が悪くて、欠勤者が多いのだからムリだ」などと、あらゆる言い訳を並べ立てます。データで理論的に説明しても、感情的に反論するため議論が成り立たないことすらあります。私の研修では自責の考え方を徹底させています。言い訳を遮り、「お前は管理者として人員削減の義務がある。人員削減で自分ができることのみ考えよ」と自分を中心とした対策を立案させるように追い込んで行きます。
2)強制的に対策を実施させる
人間は知識の吸収だけでは変わりません。知識を実践することにより成長して変わっていくのです。意識が低い人には対策を強制的に実行させることが大切です。私の研修では管理者自身に人員削減の対策を立案させるように追い込んで行きます。そしてその対策を現場で実施させます。もし、途中で対策を止めてしまったら、管理者を現場の作業員の見ている前で怒鳴りつけたりしますから、嫌々ながらでも実行するようになります。実際に対策を実行すれば結果が出ますから、やり方も分かるし自信も付きます。このように実践を通じて意識が変わり、行動が変わって行くのです。
3)作業員との会話を徹底的に行わせる
現場の事情に最も精通しているのは作業員ですから、管理者には問題の対策時には必ず、作業員の意見を聞くように指導します。私の研修では管理者に現場で繰り返し作業員の意見を聞かせます。そして管理者が作業員の意見や不満を正しく把握した上で、具体的な対策や作業員への説明方法、そして日常管理の方法などを決めて行きます。管理者は日頃、作業員から具体的な意見などを聞く機会がほとんどありませんから、研修を通じて管理者と作業員への生産性向上の合意形成が行えるのです。