実践!生産革新道場:異常が予想される時には事前に対策を伝達せよ
1:部品の取り付け間違いが発生
ある工場で製品に異なった部品を取り付けた不良が発生しました。この部品は機械に挿入して取り付けるのですが、機械に部品を投入する際に異なる部品を入れてしまったのです。私は不良品を前に管理者に次のように質問しました。「部品の取付け間違いが発生しないように、機械に部品を投入する際に部品を確認するルールがあるはずだ」管理者は「確かにその通りです。部品を投入する際には製造の作業員とQCの検査員が、生産指示書に書いてある部品番号と現物の部品番号を照らし合わせて、正しい部品であることを確認するルールとなっています」と答えました。
2:インタビューで分かった事柄
私は「なぜ間違った部品が払い出されたのか」「なぜ間違った部品が機械に投入されたのか」この2つを確認するとして管理者と共に現場に入りました。現場で作業員と班長を呼んで不良品を見せながら、現状の管理に付いてインタビューを行いました。その結果、次の事柄が判明したのです。
1)適正な部品数量を払い出していなかった
製品を生産する際は生産数量に合った部品数量が払い出されるのですが、この製品は特急品として、急遽生産計画に組み込まれました。この時、ある部品の在庫が足りなかったのですが、足りないものは後から補充するとして生産を開始したのです。そのため、生産の途中で問題の部品が足りなくなったのです。
2)口頭での払い出しを行った
生産途中で部品が足りなくなるのは稀なケースなので、作業員は対処に慣れていませんでした。通常のルールでは作業員が生産指示書の部品番号を班長に見せて、班長はそれを発注依頼書に書き出して、倉庫に発注依頼することになっていました。しかし、作業員も班長も部品の欠品で焦ってしまい、早く補充しようとしたため、作業員は口頭で部品番号を説明しました。この時、班長は部品番号を聞き間違ってしまい、異なる部品が払い出されてしまったのです。
3)部品の確認を怠った
前述の通り、生産開始前に製造とQCで部品の確認を行ってから機械に投入するルールとなっていました。しかし、作業員は「作業途中で同じ部品を替えたのだから、問題ないはずだ」と考えて、確認を行っていませんでした。さらに班長は作業員がQCに連絡して確認したものだと思い込んでいたため、部品の取り付け間違いが発生したのです。
3:事前に対策を伝達して確認せよ
管理者は「部品の欠品という事態は非常に珍しいケースだったために、現場での対処がうまく出来ませんでした。以後、十分に気を付けます」と言い出しました。私は「それは違う」と遮り、「お前の説明ではあたかも作業員と班長が悪いように聞こえるが、それはとんでもない間違いだ。生産計画を見れば今回の部品欠品は事前に分かっていたはずだ。従って班長に部品を補充する際には通常のルール通りに確認すべきことを事前に指示しておく必要があったはずだ」と指摘したのです。管理者は「生産計画で欠品になることは知っていましたが、確認の指示まで思い付きませんでした」と自分の非を認めたあと、「今後は欠品が分かっている場合には事前にミーティングを行い、確認事項を伝達するようにします」と答えました。
人間は常に思い込みや勘違いを起こします。今回のように異常が予想される時には、部下に勘違いをさせないように、事前に対策を伝達して確認することが大切なのです。