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 実践!生産革新道場:第331回:生産性向上のために班長の管理力を高めよ

 

1:目標数量未達の原因が不明

ある工場で日本人駐在員から次のような相談を受けました「新製品を立ち上げたのですが、生産性が悪くて困っているのです。この製品は今までに無いタイプのもので、作業員の習熟時間も計算に入れています。立ち上げから1ヶ月経ったので習熟度も上がっており、目標数量が出来るはずなのですが、これが出来ずに困っているのです」私は管理者に「作業員の習熟度はどうか」と質問したところ「当初は慣れずに大変でしたが、今は各工程とも標準作業時間通りに出来るようになりました」と答えました。生産技術が測定した各工程の測定データを見ても問題がありませんでした。「これならば目標の数量が出来るはずだが、なぜ出来ないのだ」「それが分からなくて困っているのです。機械のトラブルもないし、材料や部品の欠品もありません。理由がよく分からないのです」

 

2:カメラの映像で状況を確認

私は現場で作業の様子を観察しましたが、工程間の仕掛り品も規定の数量となっておりラインバランスも取れているように見えました。私は管理者に「このラインに監視カメラは設置してあるか」と聞いてみました。「あそこにライン全体の様子を撮るために設置してあります」「録画の保存期間はどのくらいだ」「1ヶ月くらいだったと思います」「それでは作業の様子を録画で確認しよう」私は管理者を集めて、「今から作業の様子を再生する。ストップウォッチで各工程の作業時間を測定しなさい」と指示しました。再生しながら作業の時間を測定させたところ「あれ!標準作業時間をオーバーしている」「この工程も余計な時間が掛かっている」と言い出し始めたのです。

 

3:班長の管理能力が現場力となる

 

私は「管理者が時間を測定する時には標準時間で作業を行っているが、誰も見ていないと作業時間を遅らせているではないか」と指摘して、班長を集めるように指示しました。集まってきた班長に録画の様子を指摘すると「私達が見ている時には時間通りに行うのですが、見ていないと直ぐに作業を遅くしてしまうのです」「班長の仕事はたくさんあるので、常に作業を見ていることは出来ません」と言い出し始めました。班長たちは作業員が見ていない時に作業を遅くしてしまうのを、自分たちの管理が悪いのではなく、作業員が悪いと勘違いしていました。そこで私は次のように指導を行ったのです。

 

班長への指導内容

1.ルールを守らせるのは班長の義務

作業員にルールを守らせることは班長の大事な役割の一つです。ですから「作業員がルールを守らないのは作業員が悪い」ではなく、作業員がルールを守らないのは自分の管理が悪い」と考えて、自分の管理方法を改めて、作業員がルールを守るように根気よく指導を行うことが大切です。

 

2.頻繁に作業時間を測定する

班長が見ていないと作業員がルールを守らないのは職場に緊張感が無いからです。緊張感を出すには、班長は頻繁に作業員の作業時間を測定することが必要です。班長が常に作業時間を測定していれば、作業員は「作業を遅くすると分かってしまう」と思いますから、作業時間を守るようになります。

 

3.必要に応じて注意する

作業員がルールを守っていなければ、その場で注意することが大事です。注意しないと「ルールを守らなくて良い」と黙認することになってしまい、職場の規律が緩んでしまいます。職場に緊張感を持たせるためにも、必要に応じて注意することが大切なのです。

 

私はこのコラムで繰り返し指摘している通り、工場の現場力は班長の管理能力と比例します。現場と密着している班長の能力を高めることが、生産性を向上させることになるのです。