実践!生産革新道場:現地化への3つの考え方
1:現地化が上手く進まない
先日、定期研修先の社長から次のような相談を受けました。「当社では現地化を早急に進めるために、日本人が中心となりOJTのプログラムを作成して現地管理者の育成を行っています。ところがこれが思うように進んでいないのです。先日、日本人駐在員を集めて現地化についてのミーティングを行ったのですが、その席で、本当に現地化は可能なのだろうか。現地化を行う自信がない。などと弱気な発言が相次いだのです。日本の本社からは、コスト削減のためにも現地化を早急に進めるように強く言われているのですが、日本人駐在員が現地化に弱気になっており、困っているのです。」
2:現地化への考え方とは
グローバルな競争を勝ち抜くには高品質な製品を納期通りに生産するのはもちろんですが、コスト削減も大事な要素です。私の定期研修先でもタイ国内の工場に見積もりを依頼するだけはなく、周辺諸国の人件費の安い国の工場に見積もりを依頼するケースも増えてきました。このようにタイと言えども周辺諸国とのコスト競争に対応して行く必要に迫られています。前述の工場では、コスト削減のために早急に現地化を進めて日本人駐在員の人数を減らそうとしているのですが、日本人駐在員からは「現地化などムリではないか」などと、諦めの声が出ていたのです。私は社長の依頼を受けて、日本人駐在員を集めて下記のように、現地化の考え方に付いて話をしたのです。
1)現地企業でも世界的な企業がある
私の定期研修先に日本はもとより、欧米の大きなブランドの服を作っている縫製工場があります。日本の大企業とも多くの取引がありますが、この工場には日本人は1人もいません。タイ人だけで日本を含めた世界の一流企業を相手に製品を生産して、取引を拡大しているのです。あたり前のことですが、タイには日系企業だけではなく現地企業も数多くあり、世界の国々を相手に利益を得ている会社が多くあります。もちろんタイだけではなく、他の周辺諸国でも現地企業で世界を相手に事業を拡大している会社はたくさんあります。この事実を見ても現地化は十分に可能であることを証明しているのです。
2)自分のミッションを理解する
私が就職した時代は大企業に入れば一生安泰であり、どのような企業でも「終身雇用制」「年功序列」との慣習が当たり前であり、私もこれを信じて働いていたものです。90年代に初めて「退職勧告」との言葉が社会の大事件として新聞に取り上げられました。現在はグローバルの競争時代に入り、大企業であっても利益が出にくくなり、退職勧告などニュースになるはずもなく、リストラも普通の話となりました。このような厳しい状況の中で企業が勝ち残って行くには、コスト削減のために自分に与えられたミッションを実行する必要があります。本社から現地化とのミッションを与えられて赴任した以上、日本人駐在員にはこれを忠実に遂行する義務があるはずなのです。
3)現地化が可能との共通認識を持つ
何事も最初から不可能だと考えていれば、出来るはずがありません。現地化は確かに難しい仕事ですが、前述した現地企業の例の通り、不可能ではないのです。日本人駐在員は「今後は現地化がムリだとは思わない。どうすれば現地化が可能かだけを考える」との共通認識を持ち、「現地化はムリだ」などとは言わないように心掛けることが必要なのです。