実践!生産革新道場:班長に問題発生時の対策を教えて守らせる手法とは
1:問題発生時に何もしない班長
私はある工場で生産性向上の指導を行っていました。出来高が悪いラインがあったので現場で確認したところ、作業員の作業スピードが遅かったり、機械のチョコ停が頻発していました。私はラインの班長に「このラインでは多くの問題が発生しているぞ。今現在どのような問題が起きて、どのような対策を行ったか説明せよ」と詰問しました。「新人の作業スピードが遅かったり、材料を間違えたり、機械のチョコ停など沢山の問題があります。問題はすべて上司やメンテナンスに報告しましたが、現場にまだ来てないのです」「上司やメンテナンスが来る間に、自分で出来る対策もあるはずだ。どのような対策を行ったのだ」班長は困った顔をして「実は問題が多すぎて、何をすれば良いのか分からないのです」と何もしていないことを正直に答えたのです。
2:作業員の代わりをしている班長
私が別の工場で生産性向上の現場指導を行っていると、ラインバランスが乱れて出来高が下がっているラインがありました。私は製造課長に「ラインバランスが乱れているぞ。現場の班長は何をしているのだ」と詰問しました。課長は慌てて班長を探したところ、班長は作業員に混じってラインで一心不乱に作業を行っていたのです。私は班長を呼び出して聞いたところ、朝から昼過ぎまで作業をしていたことが分かりました。私は「班長の仕事は作業を行うことではない。ラインの問題を対策するのが仕事である」と指摘しました。すると課長が「この班長は先週作業員から昇格したばかりなのです。問題が発生しても対策の方法が分かっていないと思います」と言い出したのです。
3:班長に問題発生時の対策を教えて守らせる
ラインで問題が発生した場合、現場にいる班長が素早く対策を実施することが必要です。しかし今回のケースのように班長が対策を理解できていないと、品質や生産性の問題を引き起こすことがあります。このような問題を防ぐためには 管理者には次の3項目を詳しく説明して、「班長に問題発生時の対策を教えて守らせる」ことを正しく理解させることが大切です。
1)班長の責任を教え込む
「班長はラインの問題発生時に直ちに対策を実施する責任がある」このことを徹底的に教え込むことが大切です。班長の中には「自分で作業を行った方が早く出来る」と単に作業員の代わりに作業を行うことが問題の対策であると勘違いしている人もいます。また「対策を考えるのが面倒だ」と現実逃避のために、作業員の代わりに作業に没頭して責任を果たしているふりをする人もいます。このような班長には「問題の対策は作業員の代わりに作業を行うことではなく、その問題を解決する対策を実施することである」と繰り返し説明して、正しく理解させます。
2)具体的な対策を教え込む
班長はラインの問題発生時には直ちに対策を実施することが大切です。そのために班長には問題発生時に上司に報告することはもちろん、問題発生時にはどのような対策を行うべきか、具体的な対策事例を教え込むことが必要です。ラインで良く発生する問題とその対策をリスト化して、これを元に班長への教育を実施します。定期的に班長同士でミーティングを行い、お互いに発生した問題やその対策方法を協議させて、対策の具体事例を共有化することも有効です。
3)OJTで実践的に指導する
班長が問題発生時に正しい対策を行えるように管理者が現場でOJTにより指導することが必要です。問題発生時には管理者は現場に行き、班長に問題の把握方法、原因の追求方法、対策の立案方法などをOJTで指導を行うのです。班長は作業員から昇格しており、基礎知識や管理手法が分からないので、現場でのOJTは班長の管理力育成のために大変効果的なのです。