実践!生産革新道場:第408回:班長から情報を引き出す3つの手法
1:話が元も戻ってしまった
ある工場で問題が発生していたため製造課長に班長を呼んで来させました。課長が班長に状況を聞いたところ「この問題は機械の調子が悪いために発生したのです」と言い出しました。「どのように調子が悪かったのだ。詳しく説明しなさい」班長は症状を説明したのですが、問題と関係なさそうだったのです。課長が「その症状は本当に問題と関係があるのか」と確認すると「関係ないかもしれないですね」と答えたのです。課長はイライラしながら「それでは何が原因なのだ」と追求すると、今度は「作業員のミスです」と言い出しました。「誰がどのようなミスを起こしたか説明しなさい」しかし班長の説明は矛盾しており、内容が分からないものでした。怒りだした課長が「本当に作業員のミスなのか」と声を荒げると「作業員のミスではなくて、機械の調子が悪かったからです」と、何と話が最初に戻ってしまったのです。
2:思い付きの説明に混乱する
私はある問題に付いて班長から説明を受けていました。説明している内容がおかしいので、話の矛盾点を指摘すると、先週発生した別の問題を話していることが分かったのです。「私は先ほど発生した問題について説明を求めているのだ。お前が話しているのは先週の問題ではないか」周りの管理者も私に同意して頷きました。私は「先ほど発生した問題について説明しなさい」と念を押したところ、班長は再び話し始めましたが、やはり矛盾点があり内容が分かりませんでした。周りの管理者が班長に再度、詳しく説明をさせると、やはり別の問題を話していたことが分かったのです。この班長は話を整理せずに、思い付いたことから先に話そうとしていたのです。
3:説明が分かり難い班長から正確な情報を引き出す手法
工場の班長は作業員から昇格しているのが一般的です。そのため相手に分かりやすい説明をする訓練を受けておらず、自分が思い付いたことばかり話したり、自分の話が矛盾していることに気が付かないケースがあるのです。管理者には次の3項目を詳しく説明して「班長から効率的に正しい情報を引き出す」ことを正しく理解させることが大切です。
1)紙に書いて確認する
前後の脈絡に関係なく、自分が思い付いたことを話そうとする班長の話を聞いていると、こちらが混乱してしまいます。このような問題を防ぐために、班長の話を紙に書いて行くことが有効です。例えば何月何日に発生した問題と紙に書き出し、これを提示しながら説明を求めます。そして時間軸に沿って班長の説明内容を紙に書いて行きます。話が矛盾している場合は、その点を示して相手にも話がおかしいことを理解させます。班長も紙を見ながら説明するので、自分の頭が整理されるのです。
2)他の管理者を立ち会わせる
説明が下手な班長は「自分は分かりやすく説明しているのに、分からないのは相手が悪い」と本気で信じていることが多いのです。このような班長に自分自身の説明が下手なことに気付かせるには、他の管理者を立ち会わせて矛盾点を指摘することが有効です。
班長の説明を受けるときには1対1ではなく、他の管理者も立ち会わせるようにします。そして自分が班長の説明が分からなくなった時に、他の管理者に「班長の話は理解できますか」と確認するのです。こうして話を聞いている人全員が理解できないと分かれば、班長も自分の説明方法が下手であることに気が付くのです。
3)一問一答形式のYES/NOで確認する
問題が緊急を要し、短時間で正確な情報を把握する必要がある時には、班長の話を聞いたあとこちらで内容整理して一問一答形式にして班長にイエスかノーで答えさせる手法があります。「この作業員によるミスである」「イエス」「ミスをしたのはこの作業員である」「ノー」「それではあの作業員である」「イエス」このようにして、こちらで話を主導して行くと短時間で情報を整理できるようになります。ただしこれは班長の教育効果は少ないので、緊急時のみの手法とすべきです。