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実践!生産革新道場:第333回:品質問題を生産性から切り込んで新たな問題を発見せよ

 

1:クレームの暫定対策を行なっていなかった

ある工場で生産性の指導を行っていたところ、1週間前に生産数量が大きく下がっていることが分かりました。私は管理者に「1週間前に生産数量が大きく下がっているが、その理由は何か」と質したところ、「客先クレームが発生したため、大量の返品を全数再検査することになりました。再検査の優先度が高く、数量も多かったのでラインから作業員を出して再検査を行いました。そのため生産性が下がったのです」と答えたのです。クレームの内容を確認すると、管理者は製品を持ってきて「この箇所に傷が発生していたのです。この箇所は客先で使用するために、傷は無きこととなっているのです」と説明しました。「この傷のクレームは今回が初めてなのか、それとも再発なのか」と聞いたところ「残念ながら再発です。昨年も同じ傷の不良が流出してしまいクレームになったのです」と言い出したので、私は「昨年のクレーム対策書を直ぐに持ってきなさい」と指示しました。管理者が持ってきた対策書を確認すると、流出防止の暫定対策として検査工程で傷が発生した箇所を全数目視検査して、検査済みのマーキングを行うと書いてありました。私は管理者に「今回のクレーム品には検査済みのマークは付いていたのか」と聞いたところ「マークは付いていませんでした」との答えだったのです。

 

2:暫定対策延長は水掛け論となった

私は現場でクレームを出したラインの管理者に「なぜクレーム品に検査済みのマーキングがなかったのか」と質問しました。管理者は「昨年のクレーム対策である全数目視検査とマーキングは3ヶ月の暫定対策だったのです。3ヶ月間、暫定対策を行いましたが、クレームが無かったのでやめたのです」と答えました。私は確認を取るためにQAの担当者を呼び出して、次のように質問しました。「ラインの管理者は全数検査とマーキングは3ヶ月間限定の暫定対策と言っているが本当か」QAの担当者は「いや、そんなことありません。確かに3ヶ月間クレームはありませんでしたが、発生原因の対策が確実とは言えなかったので、暫定対策の期限を延長しました。今回のクレームの対象ロットは、全数検査とマーキングを行うべきだったのです」私は驚いて「製造とQAで言っていることが違うぞ。どちらが正しいのか指示書などの証拠を出せ」と迫ったのです。するとQAは「暫定対策の延長はメモに書いて渡したはずだ」と言い出し、製造は「そんなメモは受け取っていない。今初めて聞いた」と言い始めました。結局「メモを渡した!」「メモを貰っていない!」との水掛け論になってしまったのです。

 

3:品質問題を生産性から切り込め

クレームなどの問題が発生すると、作業や検査に新たな工程を追加することがあります。今回のケースでは暫定対策として、全数目視検査とマーキングを新たな対策として検査工程に追加しました。しかし暫定対策の延長の指示が伝わらず、製造は暫定期間終了と判断して作業をやめたため、不良が流出してしまったのです。今回の問題はQAと製造の連絡ミスによるものですが、生産性の観点からも問題がありました。私は「暫定対策である全数目視検査とマーキングの作業時間は検査の標準作業時間に追加したのか」と質問しました。「もちろん、追加してあります」「それでは暫定対策を終了した際に標準作業時間から作業時間を引いたのか。データを出しなさい」管理者がデータを調べてみると、全数目視検査とマーキングの作業時間を引いておらず、生産の出来高はほとんど変わっていないことが判明したのです。私は「作業時間を引いておらず、出来高が同じでは実質的に生産性が下がっているではないか。管理者としてなぜ気が付かなかったのだ。お前は生産性への意識が低い!」と詰問したのです。

 

このようにクレーム等の品質問題が発生した場合、どうしても品質だけに注目しがちですが、冷静に生産性の状況も洗い出すことが必要です。品質問題でも生産性の観点から切り込むことにより、新たな問題を発見して対策を行うことが可能となるのです。