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  実践!生産革新道場:第344回:個人の責任を追求して問題の本質を明確にせよ


1:新人だから不良を見逃した

ある工場で客先に外観不良が流出してクレームとなったので、私は管理者に状況を説明させました。管理者は「今回の製品は検査で全数外観検査を行っています。この外観検査を行ったのが新人だったため、外観不良が客先に流出ししまったのです」と平気な顔をして説明したので、私は「お前の説明は新人と不良流出の因果関係が抜けており、言っている意味がさっぱり分らない。検査員が新人であることは分かったが、その新人がなぜ不良を見逃したかを説明せよ」と詰問しました。管理者は「新人教育の結果を確認したのですが満点でした。ですから、なぜ見逃しが発生したのか分からないのです」と言い出したのです。


2:意図的に100点満点を取らせていた

私は100点満点の結果が気になったので、管理者に「この新人が正しい検査教育を受けたかを確認しよう」と新人の教育記録を持って来るように指示しました。教育記録を確認すると、作業標準書を使って知識教育が行われており、筆記試験も行っていました。そして良品と不良品を混ぜた製品から不良品を種類ごとに正しく検出する不良選別テストも行っていました。不良選別テストで使用している良品と不良品を確認しましたが、不良品は判断が難しい物が多くありました。「本当に1回で100点満点なのか。念のために他の新人の教育記録も持ってきなさい」と数名分の新人の教育記録を確認したところ、やはり不良選別テストは全員が1回で100点満点になっていたのです。私は不審に思い、新人に教育の内容をインタビューしました。すると次の事柄が判明したのです。


判明した事柄

1.テストの時間が決まっていなかった

不良選別テストの時間は標準作業時間に従って行うべきですが、実際には時間が決まっておらず、通常の検査に比べてかなりゆっくりしたスピードで製品をじっくり見ながら選別を行っていたのです。


2.不良の数量と種類を事前に説明していた

不良選別テストは不良品の数量や種類も事前に教えずテストを行うことが鉄則ですが、スト開始前に「この種類の不良が5個入っていますから、選別して下さい」などと新人に事前に不良の数量や種類を教えていたのです。


3:個人の責任を追求せよ

私は、「これでは誰でも簡単に100点満点を取れてしまうぞ」と指摘して、教育の担当者を呼び出しました。そして「お前は意図的に100点満点を取らせているのではないか」と追及したところ、担当者は「以前客先の監査で検査員の教育記録を求められたことがありました。その際、不良の選別テストが満点では無かったため指摘を受けたことがあったのです」と言い訳を始めたのです。「私は客先から指摘の有無を聞いているのではない。お前が意図的に100点満点を取らせようとしているのではないか、と聞いているのだ」「ですから、客先の監査で100点満点ではないと問題があるのです」「お前は意図的に100点満点を取らせていることを認めるのだな」「それは認めます。でもそうしないと監査が通りません」私は「お前の教え方が悪いから、新人が100点満点を取ることが出来ないのだ!自分の教え方を悪いのを誤魔化すために客先監査のせいにするとは何事だ!」と怒鳴りつけたのです。


このように管理者の中には自分の怠慢を客先監査の問題にすり替えようとする人もいます。言い訳に客先監査を持ち出されると仕方ないように思えますが、あくまでも個人の責任を追求して行くことで問題の本質を明確にすることが出来るのです。