実践!生産革新道場:第365回:事前の打ち合わせで全ての問題を洗い出せ
1:修理済みの製品が放置されていた
私はある工場で生産性向上の指導を行っていました。担当の管理者は「このラインでは先月からロットの数量が半分以下になり、少量多品種の生産となりました。そのため段取りなどの改善を行って生産性を維持するような活動を行っているのです」と説明しました。「具体的にはどのような活動を行っているのか」「ロット切り替えの際に必要な段取りの改善を行っており、段取り時間のロスを最低限にしてあるのです」と改善内容を説明しました。私は説明を聞きながらラインの外に目をやると、そこに製品が2つ置いてあったのです。
「あそこに製品が2つ置いてあるが、あれは何だ」と管理者に質問すると、管理者は慌てて「直ぐに確認します」と班長を呼び付けて事情を聞いていました。管理者は「分かりました。あれは修理品です。測定器の検査で異常が出たため、修理したものなのです」と報告したので、「それではなぜラインに投入しないのだ」と聞いたところ「実は製品がすでに切り替わってしまい、別の製品が流れているのです」との回答でした。「それではいつラインに投入するのだ」「同じ製品がラインに流れたらその時に投入します」「いつ同じ製品が流れるのだ」「未だ確認していません」このように修理済みの製品の処理が分からないまま放置されていたのです。
2:修理品の対策を怠っていた
現場で処理方法が分らない製品があったため、私は管理者を集めて修理品のルールを説明させました。
修理品のルール
1)測定器の検査で異常が発見された場合、作業員は班長に異常を報告する。
2)班長は異常を確認した後、製品をラインの外にある修理箇所に運び、担当者が修理を行う。
3)修理を終えた製品は修理の担当者がラインに運び、測定器の箇所に投入する。
このようなルールになっていたのですが、ロットの数量が小さくなったため、修理が間に合わず別の製品が流れてしまったのです。管理者は「このロットが終了次第、修理品をラインに投入するようにします」と言い出したので「それは応急処置ではないか。根本的な対策を行わないと、同じ問題が次々に起こる可能性があるぞ」と指摘したところ、管理者は「その通りです。これから対策を検討します」と言い出したのです。
3:事前の打ち合わせで問題点を洗い出せ
本来ロットの数量が小さくなる段階で、これらの問題は予測できたはずです。私は管理者を集めて、事前の打ち合わせ不足を次のように指摘しました。
打ち合わせ不足の問題点
1)修理方法のルール変更を怠った
段取りなどの改善は事前に行っていましたが、修理方法のルール変更には誰も気が付いていなかったのです。「修理時間を早くする」「修理が間に合わない場合のルールを明確にする」など、事前の打ち合わせで行うべきことが行われていませんでした。
2)品質管理のルール変更を怠った
この製品はロットごとに異なるシールを製品に貼るルールとなっていました。ロットを切り換えた段階で修理品2個分のシールが余っていました。その余ったシールを作業箇所に置いたまま、次のロットのシールを貼っていたため、シールの貼り間違えの可能性もあったのです。修理がロットの切り換えに間に合わなかった場合、余ったシールの管理などの品質ルールの変更も誰も気が付かなかったのです。
3)班長へ異常の対処を説明していなかった
班長は修理品の処置の説明を受けておらず、「少量多品種になったのだから仕方がない」「上司が何とかするだろう」と考えて、修理品をそのままにしていたのです。
私は「ロットサイズが小さくなることは事前に分かっていたはずだ。多品種少量生産で生産性向上を維持するために段取り替えの改善を行ったのは良かったが、管理者がそれ以外の問題に気が付かなかったのは問題である」と指摘したのです。少量多品種への移行などの大きな変更時の事前の打ち合わせには、4Mや生産性、品質などの起こりえる問題を抽出して、事前に対策を行っておくことが大切なのです。