一個流しで問題を顕在化させて改善を進めよ
1:一個流しが出来ていない
ある工場で次のような相談を受けました。「日本から生産性向上のための支援者が来ており、10個単位で流していたラインを一個流しに改善したのです。レイアウトも変更し新しい治具も取り入れて、一個流しが出来るようになったのですが、現場を見ると以前と同様に10個単位で流しており、一個流しが定着していません」私は現場に行き作業を観察したところ、やはり10個で流していました。私は管理者に「なぜ一個流しを実行しないのだ」と質問したところ、次のように答えたのです。「実は工程内で作業員の取り扱いミスにより、製品に傷が付くことが多いのです。そのたびに簡単な修理を行うのですが、一個流しだと次工程に手待ちが生じて生産数量が下がってしまうのです。10個で流せば1個修理している間でも手待ちが生じません。一個流しではそれが出来ないために困っているのです」この説明を聞いて、私は管理者が一個流しのメリットを理解していないと判断しました。私は管理者を集めて紙を渡して「一個流しのメリットを書き出せ」と理解度のテストを行ったところ、ほとんどの管理者が答えることができなかったのです。
2:一個流しのメリットを理解していなかった
一個流しにはメリットがあるので、多くの工場で積極的に取り入れていますが、今回のように管理者が一個流しのメリットを理解していないため、改善がうまく進まないケースがあります。今回の件で背景を調べたところ、日本人の支援者は「現地管理者は一個流しのメリットを理解しているはずだ」との先入観を持っていたため、一個流しのメリットについては簡単に説明しただけでした。私は管理者が一個流しのメリットを理解せずに、納得していないままでは改善が進まないと判断したので、管理者を集めて一個流しのメリットについて次のように説明したのです。
3:一個流しのメリットとは
1)リードタイムを最短化
工程内での製品の滞留がなくなりますから、最短のリードタイムで製品を作ることが出来ます。
2)仕掛り品の最小化
1個単位で流しますから、最小の仕掛り品で生産ができます。
3)大量不良の防止
前工程で不良が発生した場合、次工程の最初の一個目で不良を発見出来ますから、ロット単位による大量不良の発生を防ぐことが出来ます。
4)ラインバランスの修正が容易
問題が発生した場合、仕掛り品で生産を繋ぐことが出来ず、作業員に手待ちが発生するために、すぐに問題発生箇所が分かります。問題の早期発見と対策が可能となるためにラインバランスの修正が容易となります。
5)生産性の向上
作業員のムダな動きが減り、製品の移動も最短となるために生産性が向上します。
4:一個流しにより問題を顕在化させよ
私は上記の内容を理解させたあと、次のように説明しました。「一個流しを行うと、今まで見えてこなかった問題がはっきりと見えるようになります。以前は工程内で傷不良が発生してもまとめて流していたため、問題が見えませんでしたが、一個流しにすると次工程が止まってしまうために、問題がはっきりと見えるようになりました。」「ここで大事なことは見えてきた問題を再び隠すために一個流しを止めてはいけない、と言うことです。一個流しにより顕在化した問題を改善することにより、現場力が強くなり生産性が向上するのです」このように私は管理者に一個流しのメリットと、一個流しにより顕在化した問題を改善する重要性を理解させたのです。
※ぜひ「5分で分かる管理者研修」をチャンネル登録して頂き、御社の社員教育の教材としてお役立て下さい。
■5分で分かる管理者研修
https://www.youtube.com/user/UVCVIDEO
※ 管理手法を詳しく解説しています。
■実践!生産革新道場
https://www.uvcth.com