正しい指示の受け方(その2)
タイでは昼食時のキャンティーンを覗けばすぐにわかりますが、実に食べ残しの多いことに驚かされます。私など子どものころから親より「出されたものは全て食べなくては行けない」「米粒を茶碗に残してはいけない」とのしつけを受けてきましたから、これらのムダを見ると感覚的に「もったいない」と感じてしまいます。タイの人々にはこの「もったいない」の感覚が希薄ですから「もったいないから節約しよう」というコストダウンの教育は難しいものがあります。
このようにコストダウンの教育ではすでにスタートの段階で日本とタイでは大きな感覚の差があるのです。そのため少し前はコストダウンの教育を行おうとするとすぐに「会社はケチだ」とのレベルの話しなってしまい苦労したものですが、最近は不況の影響でタイの人々も家庭でいろいろな節約を行っているため、企業でコストダウンの教育を行っても素直に理解してくれる状況となっており、今はまさにコストダウンの教育のチャンス到来となっています。
当社にも多くの企業よりコストダウンをタイ人社員に簡単にわかりやすく教える教材が欲しいとのご意見を頂いており、来年初旬を目指してタイ語版のコストダウンの教育ビデオを制作中です。現在はこのビデオ制作のためリサーチを行っており、先日もある日系企業にコストダウンの推進状況のお話を伺いに行きました。この会社ではかなり細かく経費節減によるコストダウンを進めており、数字の上でもはっきりと効果が表れていました。実際に行っている経費節減の具体例を教えて頂いたのですが、その中に「お客様へ送る書類用封筒は糊付けしないでホッチキスで口を止める」との項目がありました。
「糊で貼るよりホッチキスの方が安くて済むのだろうか?それにしてもずいぶんと細かいな」と思い聞いてみると「これは当社のコストダウンではなくて送り先のコストダウンになるのです。書類の送り先でもコストダウンを行っているでしょう。当然、当社から送った封筒も捨てずに再利用しているはずです。もし糊で口を止めたら開ける時、破れてしまい捨ててしまうかもしれません。ホッチキスで止めておけば簡単に開けることができますから封筒が痛まず、相手先で再利用できるでしょう。」と言われ感心しました。細かいことですがお客様のコストダウンにも協力しようとしている姿勢にこの会社の経営能力の才を感じさせられました。
さて正しい指示の受け方の続きですが、「メモを取る」の他に「わからないことを質問する」ことが大切です。
わからないことは質問して正しく理解する。
指示を一方的に聞いただけですべて理解できることはまれだと思います。当然、いろいろな疑問や質問があるはずです。指示を受ける側としてはこれらを質問して正しく理解することが大切です。「このような質問をすると怒られるのでは?」「疑問があるが恥ずかしくて質問したくない」などと考えて質問しないのでは困ります。
正しく理解してほしいのは「指示を出す人は相手に100%指示を理解させる義務がある」と言うことです。指示の内容でわからないことがあればそれを相手に理解させるのは指示を出した人の義務なのですから質問することを恥ずかしがる必要はありません。理解できるまで遠慮なく質問して正しく理解することが大切です。