正しい指示の受け方(その1)
私が講師となって相手先の企業に行き、タイ人管理職を対象に研修を行っていますが、「正しい指示の出し方、受け方」の研修を行うと、やはり基礎的な部分が抜けているなと痛感する事がよくあります。会社の仕事は全て指示によって進められて行きますから、これが正しく伝わらないと組織として効率的な仕事を行う事ができなくなってしまいます。会社には年齢、学歴、職歴などが異なる人が一緒になって働いているのですから相手に確実に指示を伝えたり、間違いの無いように指示を受けたりするにはそれなりの手法が必要となってきます。
またこの手法と同様に私はこの指示のやり取りの基本は相手に対する気配りというか相手の立場になって考える「思いやりの心」が大切ではないかと思っています。「自分が分かっていることは相手もすぐに分かる」「これだけ言ったのだから分からないのは相手が悪い」などの発想ではいつまでたっても指示の誤解によるトラブルが無くなりません。これを改善して行くには「このような指示で本当に相手が理解できるのか」「この人にはこのように説明した方が良いのではないか」「このような説明ではレベルが高すぎて分からないのでは」などの相手に対する気配り、思いやりが不可欠です。
セミナーでは手法を教えることはそう難しくないのですが、この「思いやりの心」を納得してもらうのは正直、大変なものがあります。特に学歴が高くなるほど、プライドが邪魔をして相手のレベルまで下がって考えるのが苦手な人が多いのです。組織では多くの人が協力して働いているため、企業での「管理」とは人間管理が中心となります。
人間の管理を行うには人間関係の基本である「信頼」がない人がついてきません。この「信頼」を得るにはまず最初に自分が「思いやりの心」を持って相手に接することが大切です。セミナーではこの部分を自分自身で徹底的に考えさせ反省してもらうようにして進めて行きますが、これが理解できてそして手法も理解できて実践できれば立派な管理者になれると思います。
さて前回までは「正しい指示の出し方」を見て行きましたが、今回からはタイ人管理者に理解してほしい「正しい指示の受け方」を見て行きましょう。指示を出す方が正しく伝えようと努力しても受ける方がぼんやりとしていては誤解が生じます。
1 メモを取る
指示の誤解を防ぐため、そして時間の経過とともに指示内容を忘れたりするのを防ぐためにも相手の指示をその場でノートやメモに書いておかなくてはいけません。特に数字は忘れやすいし、似ている製品名なども時間が経つにつれて混同してしまうこともあります。メモをとっておくだけでこのような誤解や指示内容を忘れたりすることを防ぐことができます。セミナーでこの説明をすると「私たちは会社からメモ帖を貰っていない。会社としてメモを取れと言うのなら会社がメモ帖を買って配るべきだ」と言い出す人もいますが、私は「メモは指示を書いておくのが目的ですからノートでもよいのです。またメモ帳が必要ならば総務に行けばミスコピーの紙などいらない紙があると思うのでそれを貰ってきて下さい。そしてそのいらない紙の裏面を自分で4っつに切ってホッチキスで止め、メモ帳として使いなさい。そうすればコストダウンになるし一石二鳥です」と説明して納得してもらっています。実際にこのようなメモ帳を使ってもらっている企業も多くあります。メモ書きはもちろん5W1Hに沿って書いてもらう事が大切です。上司に呼ばれたら常に筆記具とメモ帳またはノートを手にしてから行くようになってほしいものです。