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             「指示書の正しい書き方」

 

 

前回は日本人とタイ人では言葉による障害という大前提があるため、常に勘違い、意味の取り違いなどの可能性があるという事をお互い認識しておくことが大切であるとの内容でした。今回はこの問題を防ぐために効果的な指示書の具体的な書き方を見て行きましょう。海外での仕事では指示書はごく当たり前の事であり、ヨーロッパやアメリカの駐在経験をお持ちの方なら口頭で簡単な指示を出しても「文章にして下さい」と頼まれたり、CCとして関係なさそうな人までに文章を配布している様子に驚いた経験をお持ちだと思います。

 

我々日本人管理者にとっては指示書とはあまりなじみのあるものではないし、実際に指示書を書いたことのある方も少ないと思います。ですから指示書というと何か書きづらいイメージが敬遠されがちなのが現実です。しかし海外の企業で人種、言語、習慣、情報環境などが異なる人々を管理して行くには指示書は不可欠といえます。この指示書ですが基本を押さえてしまえば短時間で簡単に書けますし、浸透していけば管理も格段に行いやすくなります。以下に簡単な指示書を書くコツを書いてみます。

1 英語で簡単な文章で書く
タイ人、日本人が両方とも読める言語は英語となります。この英語ですが良くあるパターンとして指示書の導入を始めた頃は内容よりも「文法的に間違いない文章」「スペルが間違っていない文章」を書こうとするため辞書を引いたり、何回も見直したりと余計なところで時間が掛りすぎてしまい結局、面倒になって続かなくなってしまうケースが多いようです。指示書は英語の試験ではなく、「相手にこちらの意図を確実に伝える道具」ですから、無理して名文を書こうとしなくても良いのです。いかに完璧な英語の文章に仕上げても相手のタイ人の英語の理解力も関係しますから必ず、口頭説明の補足が必要となります。ですから最初の段階では極端に言えば単語を並べただけの「指示書」でわからないところは口頭説明で補足して行く方法で良いと思います。またどうしても英語が苦手な人は口頭で指示を出し、相手に内容をその場で英文で書いてもらい、それを確認したあと指示書として使う方法も良いでしょう。

2 5W1Hに沿って記入して行く
「どのように書いて良いのか分からない」という場合はコミュニケーションの基本である5W1Hに沿って書いて行きます。5W1Hを使っていけば指示の漏れが無くなりますし、自分でも指示の内容を再確認できる効果もあります。またこの5W1Hを使ってあらかじめ簡単なフォームを作っておき、これに書き込むようにして行く方法もあります。

3 イラスト、マンガを多用する
機械のメンテ、工程や作業方法の変更などに関する指示は英語だけでは通じ難いものです。指示書にイラストやマンガを入れれば理解しやすくなります。このイラストも時間を掛けて立派なものを書く必要はないでしょう。手書きで相手が分かる程度に簡単に書けば十分ですし、図面などがあればコピーして貼り付ければ簡単に出来ます。

4 本人に直接渡して補足説明を行う
これが大切ですが、指示書はただ渡すだけでは相手が理解できたかどうか分かりません。特に指示書は英語で書かれていますから単語一つの意味もお互いの英語のレベルで受け取りかたが変わって来ることすらあります。また指示書を受け取った方はわからない単語があっても辞書など引かずに憶測で判断する可能性もあります。このような誤解を防ぐためにも指示書は必ず相手に直接渡し、その際口頭で補足説明を行います。

5 指示書の改定に躊躇しない
この指示書を元にしての補足説明の際、内容の追加、変更、削除などが合った場合、躊躇せずその場で改定するようにします。「一度、書いた指示書だからそんなに簡単に変えるわけにはいかない」などとためらったりしてはいけません。私は指示書はシャープペンシルで書いており、口頭指示の際にタイ人の意見を聞きながら良いと思った事柄はその場で書き加えたり、相手がわからない単語はやさしい単語に直したり、不必要な個所は消しゴムで消したりとその場で改定しています。

指示書の内容を説明して、相手に復唱させ理解できたか確認します。確認後、本人のサインを取りファイルに保管しておきます。これにより少なくとも「聞いていない」「言ったはずだ」との低いレベルので問題は無くなります。指示書は慣れないうちは書くことが多少苦痛に感じるかもしれませんが、慣れてしまえばメモ書き程度の感覚で書いて行くことが出来ます。私は工場管理でこの指示書の導入し、システム化してかなりの成果を収めた経験がありますから、皆さんにもお勧めしたいと思います。ぜひこれを参考に御社の指示書のシステムを構築して下さい。