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            品質管理は人質管理

 

タイ国内の不況による需要減少を海外への輸出でカバーしようとの動きも含め、「品質」に関する市場の要求はますます高まっています。優れた品質の製品を生産するために各社とも品質管理に力を入れていますが、この認識がまだ甘いと感じる企業もあります。

セミナーなどで実際に参加者に質問してみると「品質管理とは品質管理課、品質保証課、検査課などが行うことであって他は関係ない」「品質管理とは上からの指示を守ることである」「現場は言われたことをやっているのだから品質が悪いのは上の責任である。上がしっかりして欲しい」との認識を持っているところも多くあります。すなわち品質管理とは会社のどこかの部署や経営者が行うべき活動であり、自分は直接関係ないと理解しているケースが多いのです。

品質管理とは「全社員が協力をして良い製品を作り出すこと」ですから、品質関連の部署はもちろん、製造、技術、そして事務までの全ての部署が品質管理を行う部署に含まれます。さらに「全社員」ですから上は社長から下は現場の作業員まで一人一人が品質に対しての責任があるわけです。この基本の基本を理解していないと「品質が悪いの上が悪いので自分は関係ない」「不良が出るのはあの課が悪いからだ」とレベルの低い話になってしまい、感情論の応酬となります。品質管理の基本の言葉として「品質管理は人質管理」と言いますが、品質を作り出すのは働いている人たちですから、この「人質管理」を徹底しないと品質は向上しません。これは品質が良くない、歩留まりが悪いなどの問題の原因を考えてみれば分かります。

品質問題の主な原因としては次のようなことになります。

1不注意やぽかミスが多い

2作業標準を守らない

3同じ不良が何度も再発する

4経営者、管理者、監督者、作業員にやる気が無い

5全従業員の品質意識が低い

6何回注意しても言うことを聞かない。



これらの解決方法としては一般的に次の通りとなります。

1
一人一人の品質意識の改善、高揚

2
作業の自主点検、職場管理の強化

3
作業者自身の不良を出さない自覚

4
従業員のミスに対する意識の改善

5
管理者、監督者、作業者への教育、訓練。


このように品質問題は必ず人質に結びついており、作業者の意識と監督者のリーダーシップに影響されます。経営者がいかに品質を上げようと努力しても、これらの「人質管理」を怠っていれば、他にどのような努力をしても結局は意味がないと思います。このような人たちに品質管理のシステム的な教育を行わず「品質第一だ」「品質の良いものを作れ」と言ったところで,品質管理は絶対にうまく行きません。従業員は品質がなぜ大切なのか分かりませんし、品質が悪いために発生する問題も知りません。品質を良くするために具体的に何をすればよいのかも知りません。このように日本が50年もかけて培ってきた品質管理を経営者や管理者の「品質第一」の掛け声だけで日本並みのレベルになる方が不思議です。良い品質の製品を生産するためには品質管理は絶対条件であり、「品質管理は人質管理であり、それは教育、訓練、しつけの繰り返しによって、初めて成し得ることができる」と言うことを理解して実践して行く以外に道はありません。これは本当に気が遠くなるような仕事ですが、この大変な仕事を行うために日本人管理者がいるのですから、まず日本人管理者が率先模範となり少しづつでも前に進めて行くことが肝要です。