品質管理の基礎知識(その9)
日本科学技術連盟(日科技連)が提唱しているQCサークル活動の定義と基本理念は次の通りです。
1QCサークルとは同じ職場内で品質管理活動を自主的に行なうグループである。この小グループは全社的品質管理活動の一環として、自己啓発、相互啓発を行ない、QC手法を活用して職場の管理活動を継続的に全員参加で行なう。
2QCサークルの基本理念は次の3項目である。
1 企業の体質改善、発展に寄与する。
2 人間性を尊重して生きがいのある職場を作る。
3 人間の能力を発揮し、無限の可能性を引き出す。
このような理念を踏まえて日本のある工場で「耳の不自由な作業員が働きやすい職場環境を作る」ことをテーマにしたQCサークルがありました。この工場では自動車の部品を生産しているのですが、Yさんと言う耳の不自由な作業員がいました。サークルのメンバーはYさんが働きやすくするにはどうしたら良いのだろうと考え、Yさん自身から話を聞き、QC手法を使いながら「上司が簡単な手話をマスターしてYさんとのコミュニケーションをより深める」「アラームなどが聞こえないのでパトライトを付ける」など数多くの改善を行ないました。
この話で私が感心したのはQCサークルのメンバーが「Yさんから話を聞くのも大切だが、一番大切なのは私たち自身が耳が不自由な人と同じ体験して、理屈ではなく感覚で問題を掴むことではないか」と実際に耳栓をして耳が聞こえない状態でYさんの担当課所の作業を行なったことです。このように自分自身が体で問題にぶつかり、自分自身が感じたことを基準に解決方法を探って行く姿勢は日本的と言えますが、問題解決においてはとても大事なことだと思います。タイの管理職は問題が発生しても「現場に行かない」「現物を見ない」「検証するために実際に作業を行なったりしない」など、どうしても「理屈」だけで問題を解決しようとしがちなだけに、日本人駐在員が率先して問題にぶつかる姿勢を見せることにより教育して行くことが大切だと思います。
さて品質管理を進めるにために、ぜひ管理者に理解して実践してもらいたい内容ですが「責任転嫁をしない」の他にも下記の項目があります。
現場に出る:
管理者の中には机に座ったまま現場の巡回を行わない人もいるようです。これでは限られた情報しか入ってきませんし、情報不足により判断を誤る可能性もあります。また管理者が現場に来ないと部下や従業員は「管理者は品質への関心が薄いのでは」と感じて品質への意識が低下することもあります。管理者が正しい判断を行うためには自分自身で現場を見て、担当者と話し合いコミュニケーションを深めながら情報収集を行うことが大切です。また管理者が現場に行き品質に関心があることを示すことにより、職場の雰囲気や品質への意識も向上して行くのです。
忙しいを言い訳にしない:
不良が発生すしても日常の仕事が忙しいことを理由に不良対策などの品質関係の仕事を後回しにする人もいるようです。これでは不良の対策が進まないし、同じ種類の不良が再発することもあります。また不良の対策は他の部署との協力して進めることが多いので、一人が仕事を行わないと全体に遅れが出てしまい、多くの人が迷惑します。品質に対する仕事は最優先となりますから、不良が発生した場合など自分の仕事を整理して優先順位を付けて片づけるなど能率良く進め、不良対策に遅れが出ないようにします。