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                    品質管理の基礎知識(その15)

 

私自身が製造業出身のうえ当社の顧客先が製造業のため、このコラムも工場を中心とした製造業の話を書いていますが、今回は目先を変えてサービス業の品質について書いてみます。

サービス業の品質とは「人」そのものに他なりません。製造業は仮に不良が発生しても工程内の抜き取り検査などでお客様に流出することを未然に防ぐことが出来ますが、サービス業の場合はサービスの提供者がお客様と時と場所を同じにしていますから「抜き取り検査で悪いサービスは取り除く」と言う訳にはいきません。その意味でサービス業は製造業よりはるかに厳しい管理が必要です。

私はCDを買う時はいつもショッピングセンターのシーコンスクエアにある小さな店で購入しています。この店ではCDをレジに持って行くと、店員がケースを開けてCDを取り出し、蛍光燈の下で表面に傷がない事を確認した上で「私が見たところ、CDにキズはありませんでしたが、念のためにご確認下さい」とCDを差し出してきます。そしてお客がCDに傷がないことを確認したあと、レジを打つのです。

家に帰ってからCDの傷を発見すると取り替えてもらうために、また店に行かなくてはいけないし「売った時に傷は無かった!」「いや、傷はあった!」と水掛け論になる可能性すらあります。販売時のチェックはトラブルを未然に防ぐと同時にお客に対する配慮が感じられ、信頼感を与えます。日本ではこの程度のサービスは当たり前でしょうが、タイでは珍しいサービスといえます。

私はバンコクの大手外資系の店でCDを買ったことがありますが、レジの女性店員はおしゃべりに熱中しており、睨み付けるとようやくCDを受け取り、中身の確認もせずレジを打ちました。しかも包装して渡す時に店員はなんと手を滑らしてCDを床に落としてしまったのです。店員はCDを拾い上げると私から目線をそらして「ありがとうございました」と一言も謝らずCDを差し出してきました。

この話を読んで「床に落としたCDを謝りもしないで客に渡すとは、なんとひどい店員だ!気がきかないにもほどがある!」とこの店員に対してだけ怒っているようでは管理者は勤まりません。「罪を憎んで人を憎まず」ではありませんが、CDを落とした店員よりも店の管理が問題なのです。

まず第一に「なぜこのような気がきかない女性を雇用したのか」との面接時からの採用に関する問題があります。これには「試用期間中の査定評価」の問題も含まれます。

そして第二に「なぜ気がきかない店員を一番大事なレジに配置したのか」との適正配置が正しく行われていない管理上の問題があります。

そして第三には「なぜ気がきかない店員を気がきくように社員教育しなかったのか」と社員教育の問題が出てきます。これには「サービス、教育の標準化」の問題も含まれます。

さらに第四としては「管理者は現場を巡回する際、店員の仕事ぶりを確認していないのか」と管理者の巡回指導の甘さが問題なります。

そして第五には「お客の不満、クレームを吸い上げる方法が無い」と言う不良サービス発見と対処のシステム欠如があります。

このように店員の動き一つでも管理者の品質管理の責任に行き着くのです。サービス業は管理者の怠慢がお客に直結するだけに、管理者自身の高い意識が求められます。