品質管理の基礎知識(その10)
当社にはこの「実践!管理者心得」で掲載している品質管理の内容をタイ人に教えたいとのご意見、ご感想を数多く頂いております。そこで掲載している内容を元に品質管理が短時間で学習できるタイ語の品質管理教育ビデオを制作しました。この品質管理教育ビデオはかなりの数が出ており、タイの日系企業が品質管理の教育に真剣に取り組んでいることが分かります。品質管理で大切なことは現場の作業員を中心とした従業員が「問題や異常に気が付く」ことです。この気付きには次の4つのレベルがあります。
レベル4:問題を見ても気が付かない人
目の前で問題や異常が発生しても「問題だ、異常だ」と全く認識できず、「正常である」と考えてそのままにしてしまう人です。
レベル3:問題に気が付くが、原因や対策を考えない人
問題や異常が発生したことは理解できるが「だからどうしたのだ」「考えても無駄だ」と自分の問題として捉えず、そのままにしてしまう人です。
レベル2:原因や対策を考えるが実行しない人
問題や異常が発生すると「なぜ発生したのか」の理由を考え「どうしたら良いのか」と対策を考えます。しかしこの人は頭の中で考えているだけであり、上司に報告したり自分で解決するなど具体的な行動は起こさず、結果的には何もしない人です。
レベル1:原因や対策を考えて実行する人
原因や対策を考えた後、上司に報告したり、自分で解決したりなど具体的な行動を起こすことが出来る人です。このレベルの人だけが問題を解決することが出来ます。
この4つのレベルを御社に当てはめてみると、どのくらいの割合になるでしょうか?作業員はレベル4から3、管理者は大半がレベル2でわずかにレベル1がいるのが現実ではないでしょうか?
品質管理は現場で実際に物を作っている作業員がポイントになります。レベル4の作業員は「正常な状況とは何か」「異常とは何か」「問題とは何か」等を会社から正しく教わっていない、又は教え方が悪いため理解できていない人が大半です。具体的に言えば「あるべき姿」と「あってはならない姿」を教えてもらっていないため「あるべき姿との差」が分からないのです。日本人駐在員の中にはここが理解できず「どうしてこんな大きな問題に気が付かなかったのだ!」と憤慨し「タイ人は勘が悪くて困る」と見当違いの結論に陥ってしまう人がいます。しかしこれは作業員の責任ではなく作業員を教育しなかった監督者、管理者の責任であり、会社の管理体制の問題と言えるのです。レベル4の人でも次の3項目を理解すればレベルが上がって行きます。
1あるべき姿を自覚する
2 現実と現状を把握する
3 あるべき姿と現実の差を認識する
この3項目から教えて現場の監督者、管理者がフォローして行きながらレベルを上げて行くことが大切です。また監督者や管理者もレベルを上げてもらわなければいけません。監督者や管理者が全員レベル1になるのが理想的です。このレベル1に持って行くには発想法を含めた総合的な社員教育の体制が必要となってきます。社員教育を行なわず自動的に従業員のレベルが上がることは有り得ません。私たちと一緒に働いている人たちは「タイの歴史始まって以来、初めて企業で働く世代の人々」なのですから、品質管理などは会社が教えなければ知らないのが当たり前です。品質管理には不断の社員教育が必要です。