クレームが与える影響の具体例(その2)
先日タイの名門校であるチュラロンコン大学で講演を行いました。就職を控えている日本語学科の生徒を対象に「日系企業が望んでいる人物像」について2時間ほど話をしました。さすがにタイの最高峰の大学だけあり、学生たちの理解度も高く熱気にあふれた講演会となりました。
質疑応答形式で行い、私の方からもいくつか質問させてもらいましたが、大学で日本語を学んでいる動機としては「日系企業で働きたい」と明確な目標を持っている人も数多くおり、日系企業の安定性に期待している様子を感じました。学生が抱いている日本人に対する印象としては良い面では「勤勉」「責任感が強い」と仕事面での評価が多く、良くない面では「本音と建前を使い分ける」「やさしくない」「思いやりが少ない」など対人関係の評価が中心となりました。また中には「仕事に厳しい」を良くない面にあげる人もいました。日本人の感覚で言えば「仕事に厳しい」は良い面の評価となるのですが、このあたりにギャップを感じました。今年は不景気が災いして就職も大変厳しいようですが、日本語を生かして企業の大きな戦力になって欲しいものです。
さて、前回は低学歴の従業員でも分かるようにクレームの影響の具体例を①会社の信用失墜 ②注文数量の減少 ③注文先の切り替え④ペナルティの負担 ⑤代替え品の生産
の5項目に分けて簡単に説明しました。今回はその続きとなります。クレームの教育は「クレームが来ると会社はもちろん従業員が困る」と従業員である自分自身が困ることを中心に教えて行くことが大切です。以下の具体例を御社の社員教育の参考にして下さい。
6 納期への悪影響
クレームによる再検査、手直し、そして代替え品の生産には多くの材料、機械、人員が必要となるため、通常の生産に影響が出ることがあります。通常の生産が遅れると納期通りに出荷することができなくなってしまいます。こうなると出荷予定のお客様に迷惑を掛け、会社の信用を失ってしまいます。
7 不良品の廃棄
不良が致命欠点など症状によっては再検査や手直しができないことがあり、最悪の場合この不良品が混入した製品を廃棄処分にすることがあります。製品は売ればお金になります。しかし製品を売らないで廃棄してしまうのですから、これはお金を捨てるのと同じことです。お金を捨てるのですから会社や従業員ににとって大変な負担となります。
8 作業標準の改訂
クレームが来ると不良の再発を防ぐために現在の作業標準をさらに厳しく改訂することがあります。従業員はこの作業標準に従って作業を行います。ですから作業標準の内容が難しくなれば従業員の仕事も現在より難しくなります。
9 工程の追加
不良の再発防止の対策として新たな生産工程や検査工程が追加されることがあります。この新しい工程の設置は会社にとって大きな負担となります。また新たな工程のために従業員も仕事量が現状より増えたり、作業の内容が難しくなることがあります。
「クレームが発生しても自分は関係無い!」との考え方を改めてもらうには「品質管理は全社員で行うこと」そして「クレームは従業員の仕事に直接、大きな負担となる」ことを理解させる必要があります。この2点を不断の社員教育で徹底して行き、従業員の品質管理への意識の転換が出来れば高品質の製品が生産できるようになります。